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ランニング版大リーグ養成ギプスを紹介します。

 皆さん、こんにちは!ウェルビーイング株式会社代表取締役の池上です。

 突然ですが、あなたは大リーグ養成ギプスというものをご存知でしょうか?『巨人の星』や『アタックナンバーワン』を読んで育った私くらいの世代の人であれば、誰もが知っていると言っても過言ではないあの装置のことです。


 知らない人のために簡単に解説をしておくと、バネの入ったギプスで、自分が動くのと反対の方向に引っ張る力が働き普段よりも余分に力を入れないとその動作が出来ないという代物です。『巨人の星』の主人公の星飛雄馬はこの大リーグ養成ギプスを使って、日常生活でも筋力を強化して、剛速球を投げるピッチャーへと成長していきます。


 これに似た話がドカベンの中にも出てきます。どこの高校か忘れましたが、ガマといういつもマントを着ているピッチャーがいて、「あいつは何故いつもマントを着てるんだ?」と謎に包まれた存在として描かれているのですが、ガマは実は日常生活でも常にダンベルを持っており、そうやって鍛え抜かれた腕から繰り出されるボールは球質が重く、芯でとらえたと思っても外野フライにしかならないという設定の話です。


 昔から人気になったスポ魂漫画には色々あるのですが、それにはある共通点があります。それは、日常生活でも鍛えているということです。生活即ちなんとかという話のものが人気があります。最近になってから人気になった野球漫画の『メジャー』も海堂高校という高校に入学すると、離れ小島に連れていかれて、そこで生活即ち野球という生活を送る訳です。


 因みに全国高校駅伝強豪校や大学駅伝強豪校、実業団選手はさすがにスポ魂漫画には負けるとは言え、これに近い生活を送っています。ご飯は食堂のお姉さんかお兄さんが作ってくれて、その人たちが管理栄養士であるケースも少なくなく、練習が終わるとすぐにご飯が食べられて、専属の治療家の方がいて、門限があって、朝起きる時間は決まっていて、中には寮内にジムがあったり、超音波や酸素カプセルが据え置かれているところも珍しくありません。恵まれた環境の引き換えに選手の管理は徹底しており、息苦しいと感じる選手も少なくはありません。


 こういったスポ魂精神には最近では反発を抱く人も多いです。私はどちらに入るのかはよく分かりません。私にとっては何が嫌かと言うと、強くなるなら、しばりつけてくれても良いけれど、あなたの言うことを聞いて強くなれる保証はあるのか?私の方が正しかった場合にはどうやって責任を取ってくれるんだ?という部分です。まあ、そうは言っても私も指導者も神様ではないので、最終的にはどこかで妥協点を見出すしかないのですが、例えば洛南高校時代に嫌だったのが、理由のよく分からない理由で延々と怒られ続けるミーティングでした。怒られる理由も「緊張感が無い」とか「あの時、どこどこであいさつしてなかったとか」、「記録用紙の字が汚い」とかそういう類の話です。挨拶をしてないと言っても、一日何回でも挨拶している訳で、しかも先輩だけでも20人くらいいますから、一日のどこかで挨拶してない時があっても正直しかたないのですが、そういう理由で延々と怒られます。しかも、連帯責任なので、絶対に誰かはどっかでやらかしているので、絶対に怒られない日はないのです。


 そういうので帰る時間が遅くなると睡眠時間も短くなり、コンディションに影響するので、嫌でした。またチームによっては就寝時刻が10時と決められており、9時50分に点呼があるのですが、そういうのも私は寝られる日には9時とか8時とかもっと早くに寝たいので、かえって迷惑なのです。そういう意味ではスポ魂精神は嫌いです。


 でも、一日の中でどれだけ競技と結びついていられるのかというのは大切なことだと思います。鍛える鍛えないというよりも、出来るだけそのことと結びついている時間を多くとることで、いざ動きだしたときの集中力が違うのです。やっぱり身になることが多くなります。そういう意味ではスポ魂精神は好きです。


 ただ、残念ながら漫画の世界の出来事は漫画の世界の出来事だと思うことも多々ありました。例えば、私は一時期、家から洛南高校まで山を一つ越えて片道18キロを自転車で通っていたことがあります。漫画なら普段の練習に加えて自転車で鍛えた体力で無敵となり、全国高校駅伝でも区間賞を獲得していたでしょう。ところが、現実的には長距離走やマラソンで速くなるのと自転車こぐのとではやっぱり違うんです。


 故障で走れないというのであれば、全く体を動かさないのと体を少しでも動かすこととの差は大きくなるでしょう。ですが、普通に走れているのであれば、走る以外の時間はリカバリーの質を高めることに専念したほうが良いのです。ちょっと自転車をこぐくらいなら、マイナスにならないでしょうし、寧ろ血液循環が良くなって疲労の回復が促進されることもあるかもしれません。


 ですが、山一つ越えてしかも往復36キロを毎日というのはやっぱりマイナスだったと思います。そのように考えると、徒に走行距離を増やすこともこの自転車と同じ結果を生むことになると思います。徒に走行距離を増やすと言っても、私の場合は月間1000kmや1200まで伸ばした結果の結論なので、ほとんどの市民ランナーの方にとっては、伸ばせるなら総走行距離は多い方が良いとは思います。


 ただ、月間1000km走っていてもメインの練習自体はインターバルであり、テンポ走であり、中強度の持久走なので、そういう意味では、ただがむしゃらに総走行距離を増やしても仕方ないのかもしれません。スポ魂漫画としては面白いですが、それで競技力が向上するからは微妙なところです。


 私自身も結論は出せません。マイナスだとも言い切れない気はします。でも断定できることはあります。それはレースとは両立できないということです。月間1000kmをコンスタントに走っていた時期でも、レース期は月間600km程度です。それ以上は走れませんでした。そして、そのレース期というのはトラックレースなら2か月から6週間くらいはある訳です。


 という訳で、ドカベンのように家と学校の往復8キロを走りこんだら、盗塁がバンバン決められるわけではないということです。陸上のスポ魂漫画があるなら、家と学校の往復を走って大会でどんどん結果を出すという設定もありそうですが、実生活ではそのようなことはあり得ません。陸上競技では「目標とするレースの日に、目標とする距離において、目標とするペースで走り切る」ということが重要で、それに向かって努力をしないと意味がないということです。


 因みに毎日腹筋を千回していた時期もあったのですが、それもトレーニング効果としては別になかったと思います。それは今から思えばとかではなくて、やっていた時から「別にこれで競技力が上がる訳ではないだろう