セルフコーチングの第一ステップ:ゴールを決める
セルフコーチングの第一ステップはゴールを決めることです。これまで私は目標という言葉を使っていたのですが、目標という言葉は少し分かりにくいかなとも最近思い始めました。というのは目標というのは何段階にも設定できるからです。今日の練習の目標、今週の目標、今月の目標というように何段階にも設定できるので、ちょっと分かりにくかったかなと思っています。
本書の中では以下の言葉を使いたいと思います。目的地、最終的にやりたいこと、そして情熱の対象です。ゴールというのは最終目的地のことです。とりあえビジョンを定めるのが、先ず最初です。これは最終的にボストンに行きたいのか、東京に行きたいのか、ベルリンに行きたいのかという最終目的地です。ただし、その具体的な行き方は全く分からなくても構いません。
ただ、絶対に必要なのは、それがあなたのやりたいこと=情熱の炎を燃やすものでないといけないということです。逆にあなたがそれをやりたいと本当に思っているのであれば、最終的に達成できるかどうかが分からなくてもゴールにしてしまえば良いのです。人間は心で動いています。
生理学的な観点から言えば、グリコーゲンと脂肪酸と酸素を使って動いているとも言えるのですが、もっと根源的なエネルギーは心のエネルギーです。健康体であったとしても人は生きる理由がなければ死ぬのです。
生きる意味を自分で見出すことが出来なければ、死んでしまうでしょう。というのも、生きているだけでもそれなりのコストがかかるからです。自殺の理由は様々でありますが、アルベ―ル・カミュが『シーシュポスの神話』の中で書いたように「この苦痛に耐えながら、生き続ける意味などないという1つの答えを出したことになる」と言えなくはないでしょうし、大半の自殺に当てはまるでしょう。
逆の言い方をすれば、あなたの心の中にメラメラと燃えるビジョンがあれば、それが大きなエネルギーとなるということです。そして、それこそがあなたが走る意味です。あなたがたどり着きたい理想のゴールを心の中に掲げなければ、行くあてのない旅と同じで、頼りなく心もとないものになってしまいます。このゴールを決めるにあたってはシンプルな2つのルールがあります。
・自分のやりたいことをゴールにする
・現状の外側に設定する
1つ目の自分のやりたいことをゴールにするのは単純です。そもそもの話をすると、あなたがやりたくないことをやる意味はありませんし、やりたくないことを目標にしても、心のエネルギー量が大きくなりません。現代社会では、心が過小評価されているように感じます。ある意味では、これは私が言うことで説得力が出てくるのではないかなと思います。
私は普段本当に走っているか、仕事をしているか、本を読んでいるかという生活しかしません。飲みに行くことも、出かけることもほとんどありませんし、世間一般で言われるような娯楽はほとんどしません。別にストイックなわけではなくて、本当に興味がないのです。
例外としては、結婚した今でも女好きが直らないことくらいでしょうか。精力が有り余っているので、出来ることなら瓶詰めして、ウェルビーイング株式会社から販売したいくらいです。とは言え、走ることとか、仕事と比べるとそれほど好きではないので、結局走っているか、仕事しているか、本を読んでいるかという生活しかしていません。
でも、冷静に考えてみて頂きたいのですが、人間っていくら意志が強くてもストイックにいつまでも走って、仕事してってそれだけでは無理です。それをやり続けられるのは、結局それが「私のやりたいこと」だからです。本も何冊読んだのか、もう数え切れませんし、書いた文章量も凄くてこの前『池上秀志全集』をサンプルで作ってもらったら、国語辞典くらいの重さになりました。しかも、それにプラスで『ランナーズバイブル』があります。
メルマガなどの文章を全部合わせたら一体どのくらいの文章量になるのか?
しかも、まだ起業してたった2年なので60歳とか70歳になるころには一体どのくらいの量になるのか?
自分でも想像を超えるペースで書いていますが、その大きな理由は書くのが好きだからです。もちろん、皆様からリクエストを頂けるからというのもあるのですが、それだけでは書けるものではないですし、嫌々書いていたら、こんなには書けないでしょう。そうすると、そのエネルギーはどこから来るのかというと、結局「書きたい!」という心のエネルギーから来ている訳です。カーボローディングすればたくさん本が書けるかというとそんなことはないでしょう。
ゴールは必ず、自分がやりたいことに設定しないといけません。別に1つである必要はありません。マラソン、ハーフマラソンとそれぞれ目標があっても構いませんし、年齢別に目標があっても構いませんし、優勝したい大会が3つあっても構いません。あとは本当にそれがやりたいことであるならば、別に純粋にランニングを最終ゴールにしなくても良いということも書いておきたいと思います。
プロの選手であれば、お金を稼ぎたいから大会で優勝したいというのは普通の感情です。別にここをゴールにしても構いませんし、市民ランナーの方でも大会で活躍して、美ジョガーと付き合いたいでも構わない訳です。本当にやりたいことを必ずゴールに設定してください。
このゴールは心の中に思い描くだけで楽しくなるような、ワクワクするようなものにしてください。何度も書きますが、達成できるかどうかは正直重要ではありません。それよりも、この先それを楽しみに前に進み続けることが出来るような何かであることの方が重要です。
2つ目のルールは現状の外側に設定するということです。ただ、この2つ目のルールは必須という訳ではありません。このルールを満たしていないといけないというよりは、検査の役割を果たしていると考えたほうが分かりやすいです。人間が本当に心の底からワクワクするような、やりたいゴールを設定した時に、「手を伸ばしたら届くようなゴール」を設定することは普通はありえないのではないでしょうか。
もちろん、今年収が500万円で最終的には1億円稼ぎたいから次の段階として年収600万円を目指すというのは、ありえなくはないと思います。ただ、初めから年収600万円をゴールにしてワクワクするということはあり得るのかなと考えると私はかなり懐疑的です。正直、そんなに変わらないので心のエネルギーは生まれないのではないでしょうか。
ポイントは本当にそれは自分がやりたいと思っていることなのかということです。目標は現実的でなければいけないとか「手を伸ばしたら届くところに設定したほうが良い」という話を聞きすぎて、自分でもなかなか馬鹿になれないと言いますか、勝手に制限をかけてしまっている可能性が高いような気がします。ここで定めるゴールはビジョンとか夢とか妄想とか言えるようなもので構わないのです。
考えただけでワクワクするようなものでなければいけないのです。だから、あまりにもすぐに達成できそうなゴールとか現実的なゴールを設定してしまった人は一応検査機関として「現状の外側になっているかどうか」を置いておいた方が良いです。
そもそもの話をすると、「何が現状の外側」で「何が現状の外側でないか」は明確ではありません。ただ、自分でなんとなくは分かるはずです。一番分かりやすい基準は今のまま練習していたら、達成できそうか出来なさそうかだと思います。なんとなく今のまま練習していたら 、このくらいのタイムまではいけそうかなというのは分かってくると思います。
ほんの一例をあげると、弊社から出している「ブレない走りと綺麗な体を手に入れよう!ランナーの為の体幹補強DVD」でインストラクターを務めてくださっている小谷祥子さんは、一緒にお仕事させて頂くようになってから走り始められました。
そして、この小谷さんが初めは5キロ走るのもきつかったそうなのですが、徐々に10キロ、15キロ、20キロと走る距離を伸ばして、20キロを1キロ4分50秒で走れるところまで来ました。ただ、練習は1キロ5分前後のペースで走るという一本やりです。そうすると、このまま走る距離を伸ばしていけば、マラソンでサブ3.5は達成できるかもしれませんが、サブ3を達成するとか、5キロで22分を切るということになれば、全く別の要素が必要になるでしょう。
また、一度は20キロを1キロ4分50秒ペースで走られたとはいえ、2月のウェルビーイング15キロレースでは、72分でゴールした後、翌日はかなりの筋肉痛で、なんとかレッスンをこなされたとのことでしたから、42.195km走り切れるようになるというのは現時点では、なかなかイメージできないでしょう。そう考えると、ご本人的には現状の外側なのかもしれません。
また、この現状の外側というのは人によっても変わってきます。例えば、現在の私からすれば、一度起業を経験しているので、もう一つ会社を作るのも十分に現状の内側です。一度経験しているので、そんなに大変なことではありません。ただ、一度目の起業に関しては、今まで陸上しか経験がなく、就職も経験していないのに、いきなり起業したのは現状の外側だと言えるでしょう。ただ、やっぱり現状の外側だけあって非常にワクワクしましたし、今でも情熱を燃やし続けてお仕事させて頂いております。
このように、境界線になってくるとやや微妙ではありますが、それでも一つ確実に言えることは、「現状の外側にゴールを設定する」というのを一つのルールに加えておいた方が良いということです。まれに、本当に現状の内側なんだけど、それが自分がやりたい最終ゴールというのもあり得ると思います。
例えば、洛南高校陸上競技部が今年の全国高校駅伝で優勝するというのは、簡単なことではありませんが、普通に現状の内側と言えるでしょう。それでも、部員は日本一になっている自分たちを想像するだけでワクワクするはずです。こういうケースもある訳ですから、2つ目の「現状の外側にゴールを設定する」というのは、絶対的なルールというよりは、検査機関としての役割が強いです。
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