運動生理学的観点から見た、マラソンレースペースに近い距離走を何本もやった方が良い理由
- 深澤哲也(ウェルビーイング株式会社副社長)

- 2025年1月16日
- 読了時間: 11分
更新日:2025年12月10日
あなたはマラソン前に30kmを目標レースペースで一本できていたら本番は大丈夫、というような主張を見たことはありませんか?
もしくはあなた自身が、マラソンに向けた距離走はレースペースでやらないといけないと思い込んでいませんか?
実はそれはマラソンに向けたベストな方法とは言えません。
実際、こういう経験はありませんか?マラソンに向けて練習を積み、レースが近づいてきたタイミングで30km(ないしは35km)をほぼレースペース付近でこなす。しかし蓋を開けてみたら、レース当日はその距離走のペースで走ることもできず、30kmから大失速・・
実はこれ、距離走のペースをもう少し落として、そして本数を何本もこなすことで解決できる可能性があります。そうすることで今よりも苦しいことをしなくても良くなる上、結果が良くなるのですからそんなに良いことはないでしょう。
そして、今回はそれが可能な理由を運動生理学的観点から解説していきたいと思います
ランニングエコノミーという観点からの説明
まず、距離走のペースをレースペースから少し落としてでも何本もやった方が良い理由の一つに、ランニングエコノミーの改善が挙げられます。
ランニングエコノミーとは「ある任意の走行速度における酸素摂取量」のことです。言い換えると「その人がある任意のペースで走った時に、どれだけのエネルギー量を必要としているのか?」ということです。
具体的に言えば、サブ3目標の人が4’15”/kmペースで走った時にどれだけのエネルギー量が必要なのか?ということです。この時に必要なエネルギー量が減れば、当然4’15”/kmで走ること自体が楽になります。これは車の燃費が良くなったというのと全く同じことです。
ですので、最終的には目標とするレースペースにおけるランニングエコノミーを改善していく(必要なエネルギー量を減らしていく)ことが求められます。
ただし、基本はあるペースのランニングエコノミーが改善すれば、他のペース帯のランニングエコノミーも改善します。つまり上記の例で言えば、最終的には4’15”/kmにおけるランニングエコノミーを改善したいけれど、4’30”/kmのランニングエコノミーが改善すれば、必然的に4’15”/kmのランニングエコノミーも改善している可能性が高いということです。
つまりこの理屈からいくと、レースペースに近いペース帯(レースペース90~95%)でや距離走をやれていれば、レースペースでのランニングエコノミーもほぼ間違いなく改善されるだろうということです。
そして、そのためには反復が必要。人間の体は、一回の刺激から得られるものは多くはありません。
考えてみていただきたいのですが、仕事でもなんでも、一回言われただけで完璧に理解できる人ってどれだけいますか?少なくとも私は無理です。ですが、何度も何度も聞いていると、段々とそれが当たり前のレベルになっていきますよね。最終的には、無意識のレベルに入っていくと思います。
そう、ランニングエコノミーが目指す最終到達点は、無意識レベルでの走りの経済性をどこまで上げていけるか、なんです。そのためにはなんといっても反復です。これが、レースペースでの距離走ではなく、レースペースから少し落としたペースでの距離走を反復することを推奨する理由です。レースペースでの距離走は、負荷がどうしても高いのであまりコンスタントに反復することができないため、結局のところランニングエコノミーの改善にもあまりつながらないのです。
運動単位という観点からの説明
人間の体は、全ての運動において「運動単位」という機能によって動いています。
この仕組みとしては、脳から電気信号が送られ、それが運動神経を伝って筋繊維に届き、そこで初めて脳が意図している動きが実現します(下図参照)

この運動神経一本につき、筋繊維が300本前後ついていると言われています。これが運動単位と呼ばれるものです。
そして、この運動単位の機能は、二つの要因によって決まります。1つは筋肥大、もう1つがそもそも動員される運動単位の数が増えることです。
筋肥大については、正直長距離走やマラソンではあまり関係がない話です。全く関係ないことはないですが、長距離ランナーであまり筋肉もりもりにすることは、錘をつけて走るようなもので明らかに不利なことなので、基本的に考えることはありません。
ただ、二つ目の運動単位の動員ということについては、実は長距離走やマラソンにとって非常に重要な「筋持久力」を決める要因になります。
まず、マラソンの場合は少なくとも最大筋力からはだいぶ離れたところの出力になるので、動員される運動単位の数はそこまで多くありません。ですが、実は私たちの体は結構すごくて、体をずっと動かし続けられるようにこの運動単位を交代で使うようにできています。イメージで言えば、走っている最中に運動単位Aが疲れてきたら、自動的に運動単位Bに切り替え、それが疲れてきたら運動単位Cに切り替える、みたいなことをしているのです。
そして、ペースの速い距離走を何本もやることによって、この運動単位の交代をスムーズに切り替えられるようになります
そのおかげで、実際のマラソンレースの中でも、ある運動単位が疲れてきたらすぐさま別の運動単位に切り替えることができるようになり、最後までしっかりと体を動かし続けることができるようになります。
また、そもそも筋繊維自体も疲れにくくなるのも、筋持久力が向上する一つの要因です。
そして、それを達成するためにも結局、反復が重要です。理由は、先述したものと同様です。結局何回も何回も繰り返すことで、体が効率の良い運動単位の動員の方法を覚え、それがレースでも無意識に繰り出されるようになるのです。
代謝という観点からの説明
最後に、代謝系の観点からみていきたいと思います。
代謝というのは生体内で起こる化学反応全般のことを言います。早い話が、エネルギーを生み出す営みのことです。
そして代謝には4つのシステムがあります。クレアチンリン酸系、無気的解糖系、有気的解糖系、有気的脂肪分解系です。
我々の体は基本的には酸素を使う代謝=有気的代謝でエネルギーを作っています。
そして、マラソンに関しては特に右二つ、有気的解糖系、有気的脂肪分解系を使います。
解糖系の「糖」とはつまりグリコーゲンのことで、脂肪は呼んで字の如くです。そしてこの二つの中でも、マラソンの運動強度になると基本は有気的解糖系をガンガン使います。
ただ、グリコーゲンは体内に貯蔵できる量が多くなく、フルマラソンを走るためには不十分な量しかありません。なので、前半から有気的解糖系の代謝をバンバン回して、グリコーゲンを激しく消費してしまうと、遅かれ早かれエネルギー切れを起こします。
それを防ぐためには、前半からしっかり有気的脂肪分解系も動員して、なるべく有気的解糖系の代謝を温存できるようにしておくことが大事です。これも練習からある程度速いペース(レースペース90~95%)での距離走を何回も何回もやっておくことで、その予行演習ができます。
実際、ある程度のペースでの距離走をやり始めて最初の方は、きっとグリコーゲンがなくなっていく感覚を味わうことになります。私もそうでした。ただ、何回もやっていくと体もいい加減覚えてくるんですね。私もいつしかグリコーゲンが切れてフラフラになる感覚はほぼ感じることがなくなりました。加えて、それを温存する術を覚える。それが有気的脂肪分解系の代謝回路を早く回す術を体が覚える、ということなんです。
運動生理学的観点からみた反復の重要性
ということで今回は運動生理学的観点からみた、レースペースに近い距離走を何本も繰り返すことの重要性を解説しました。
今回解説したいずれの事象も、結局は「反復」が鍵であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
レースペースでの距離走は、どうしても負荷が高くなりすぎるゆえ、反復が困難になります。それであれば、レースペースから少し落とした90~95%の強度に抑えるだけでもだいぶ反復しやすくなりますし、運動生理学的な観点からみてもその方がより良い効果が得られやすいということがわかります。
なお、ランニングエコノミーという観点からみたら、最終的にはレースペースでの反復が大事であるということも言えます。その点から考えたら、距離走の最後の5kmくらいだけは、余裕があればレースペースに上げるということは全然アリだと思います。
さて今回、運動生理学の観点から距離走を考えてみましたが、いかがでしたか?
運動生理学というのはあくまで学問なので、別にそれが正しいトレーニングを導き出すことはないです。ただ、運動生理学の知識を深めると、自分のやっているトレーニングが体にどんな変化をもたらしているのか?ということを結構明確に理解することができます。
すると、練習しているけど結局何が変わったのかがわからないとか、練習の意味が感じられないということからは間違いなく解放されるでしょう。
そして、もしあなたがこの運動生理学について面白いと思われたり、また運動生理学が好きで、これからもご自身のトレーニングの方向性を裏付ける良きパートナーとしてその知識を深めていきたいと思われるなら、絶対に受講してみて欲しい講義があります。それが「長距離走・マラソンの為の運動生理学概論」です。

もしあなたが運動生理学について興味を持ち始めていて、書店にある本やYouTube動画よりももう少し深く学んでみたいと思われているなら、こちらの講義動画はあなたの為のものです。
なぜなら、こちらの講義は運動生理学の入門講義として作成されたものだからです。この講義で解説するのは、現代においてわかっている「長距離走・マラソンを走っている最中の人間の体では何が起きているのか?」ということと、加えて長距離走やマラソンにおける実用的な側面の入り口の部分です。
では長距離走・マラソンにおける運動生理学の実用的な側面とは、一体どういうものがあるのか?
例えばですが、走っている時の感覚と、実際に起きていることが食い違う、ということって結構ありませんか?
よく生じる問題としては「力を入れたら速く走れそうな気がする」とかです。なんとなく地面に強い力をかけると速く走れる気がするのですが、あくまで「気がするだけ」。実際は、力を入れれば入れるほど余計な力の浪費が発生して遅くなります。
また他の例としては、追い込めば追い込むほど速くなる気がするけど実際はそうではない、ということもあります。一見当たり前と思われるかもしれませんが、いざ自分のことになると陥りがちな問題ですよね。
運動生理学を学ぶと、こういったことが理屈でわかっていくのです。
そもそも運動生理学とは、運動中の体内で何が起きているのかを解き明かしていく学問です。ということは、運動生理学の知識をつけると「無理なものは無理」ということがわかるようになります。
その結果として、目標ペースより1kmあたり10秒も速く入るようなオーバーペースをやったらもうそのレースは台無し確定ということがわかったり、正しい乳酸閾値の知識がついて、一番効果が最大化され、かつ疲労残りも少なく抑えられる練習強度を適切に判断できたり、そういった実践的メリットもあるのです。
つまり運動生理学というのは「適切なトレーニングやレースをするための判断材料」となり、良きパートナーとなってくれる知識です。今回はそんな運動生理学の世界の最も基本的で入り口の部分をまとめて解説した講義となります。
具体的な内容は以下のとおりです。
目次
・運動生理学の目的
・人が走るとは?
・四つの代謝系
・最大酸素摂取量
・乳酸生閾値
・走経済性
*約1時間40分の講義動画となります。
こちらの講義を受講していただくことで得られるメリットは、以下のとおりです。
・自分の行うトレーニングによる体の変化を予測できるようになる
・自分の行うトレーニングの効果を理解できるので、やる気が出る
・これは必要ないなという練習がわかるようになる
・ネットの情報や書籍、練習会で指導される内容、知り合いのランナーさんが話す内容などが正しいのか間違っているのかを正確に判断することが出来るようになる
・走ることがもっと楽しく好きになる
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ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤哲也





























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