理想的な走り方は「引き算」によって決まる
- 深澤哲也(ウェルビーイング株式会社副社長)

- 2 日前
- 読了時間: 17分
あなたは理想的な走り方とは、どのようにして作られると思いますか?
接地を変えてみる?腕振りを変えてみる?足を上げる高さを変えてみる?
どの世界においても、すでにうまくいっている人をうまく模倣するという方法は有効です。箱根駅伝や実業団ランナーの走りを見て、それを真似するというのも良さそうですよね?
実際私自身、これまでのランニング人生でこれらの方法は全て試しました。走り方を良くしていくことに対して私は元々結構興味が強く、色々なトップランナーの真似もしてみましたし、意識的にあれこれと試したりはしました。
その上で申し上げましょう。このような意識的な取り組みでうまくいったことは、何一つとしてありませんでした。むしろ、元々持っていた走りのバランスを崩してしまい、マイナスに働くことの方が多かったです。
今日はそんな私自身の経験も踏まえて、理想的な走り方を作るための方法について解説していきます。
意識して変えるというのはつまり「足し算」
まず前提として、走り方を改善するという取り組みそれ自体は、良いことです。
走り方というのはつまり、走技術。これが改善するということは、ランニングエコノミーが改善し、余計な力を消耗しなくなるということです。余計な力を消耗しないということは、仮に今と全く同じ走力のままでも燃費が改善するようなものです。
私たちの体は常に体内で「代謝」を起こして運動に必要なエネルギーを生み出していて、生み出したエネルギーを使って走っています。その中でペースを上げようと思うと、方法は二つあって、一つは生み出せるエネルギーの量を増やすこと、もう一つは生み出したエネルギーをなるべく無駄遣いせずに走れるようになることです。
走り方の改善はこのうちの後者を改善することにつながりますから、タイムの改善につながるというわけですね。
まあ、もう少し直感的に考えても、走り方が綺麗になれば速くなるような気はしますから、走り方を改善しようという取り組みは誰しも一度はやるものではないでしょうか。
そこでまずやってしまうのが、意識的にかつ部分的に何かを変えるという方法です。具体的には、冒頭で挙げたように接地を変えようとしたり、腕振りの角度や位置を変えようとしたり、足を上げる高さを変えようとしたり、といった類のことです。
意識的に変えるというのは、必ずしも悪いとは言いません。非常に短期的な観点では、プラスに働くこともあります。例えば走っていて力みに気づいた時に、腕を下ろしてみる。そうすると力みが抜けて動きが良くなることがあります。
また、顎が上がって視線がブレてしまっている状態で、ちゃんと顎を引いて視線を前のランナーの腰に集中させることで、一時的に楽になることもあります。このように超短期的(そのレースの中とか、それくらいの話)には、意識的に走り方を変えるのは効果的に働くことがあります。
ですが、中長期的に見たらむしろマイナスが大きいです。なぜなら、そもそも走るという動作自体が1歩当たり1秒未満の世界の話であり、それを数千、数万回繰り返すので、全部意識し続けるなんて無理だからです。
例えばこれがサッカーで、フリーキックの時のフォームを意識的に変える、というのは可能でしょう。フリーキックなんて一試合に数回あるかどうかの話ですからね。むしろそのフォーム改善で得られるものの方が大きくなる可能性も十分にあります。
ですが、ランニングでは無理です。むしろ意識することによって、余計な力が入ってしまったり、元々持っていたバランスを崩してしまうことに繋がりかねません。
意識をして接地を変えるとか、足を高く上げる動きを入れるとか、お尻を使おうとするとか、こういったものは全て「足し算」です。つまり、元々の自分の走りの動きになかったものを付け足そうとする行為です。
そしてそれは、私たちの体の発育過程に本来含まれていない動きを無理やりつけるようなものです。言うなれば「整形手術」みたいなものです。顔の整形は見た目が良くなれば良いのでOKですが、走りに関しては実際に「楽になったかどうか」だけが大事です。
その観点から考えると、意識して足し算をしてあれこれ改造したフォームは、十中八九元より楽にはならないです。長距離走・マラソンにおける走り方では、何よりも「楽に走れること」が重要です。楽にならない改造は全て改善ではなく、改悪なのです。
理想的な走り方は「引き算」によって決まる
では理想的な走りはどうやって身につけていけば良いのか?ということですが、答えは「引き算」です。要するに、元々ある動きから余分な動きを取り除いていくのです。
「一流ってのは常にシンプルなんだ」これは元プロ野球選手・監督で名を馳せた落合博満さんの言葉です。
野球でも一流の選手はバッティングにしろピッチングにしろ、無駄な動きがない、余計な力が入っていないという話をよく聞いたことがありますが、これはランニングにおいても全く同じです。
私は今、中学生もかれこれ通算30人くらい指導していますが、もう走りをパッと見ただけでその子が速いかどうかはある程度わかります。速いか遅いかは素人でもわかると思います。問題は「ぱっと見速そうな子」と「速い子」の違いです。私はその違いもすぐにわかります。
どこでそれを見分けているかというと、動きの無駄です。本当に速い子は、動きに無駄がないです。
この無駄というのは、本当に些細なことです。例えば接地時間がほんの0コンマ数秒長いとか、足の返し(後ろに流れた足が前に返ってくること)がほんの0コンマ数秒遅いとか、接地した瞬間に上体の乗り込みがほんの0コンマ数秒遅れるとか、そういったことです。
これ、実際にぼーっと見てるだけでは正直わかりません。ただ、何人も見ているとわかるようになってきました。そして、本当に面白いくらいに、タイムが速くなればなるほどこの無駄な時間や動きが少なくなり、遅くなればなるほど多くなるのです。
ではその無駄はどのようにして無くしていけば良いのか?答えは簡単で、たくさん走ることです。まずは何よりもこれです。
練習量が増えれば、体は基本的に勝手に楽をしようとします。いや、正確には脳が楽をしようとします。私たちの脳は常に、必要な労力以外は温存しようとします。これは自己保存の本能が働いているため、人間であれば誰しもがそのようになっています。
そこで、月間走行距離が100kmくらいの場合だと、正直無駄な動きがあってもそこまで問題にならないんです。なぜなら、それくらいの練習量であればきっと、走らない日もそれなりにありますよね。走らない日があるので、体はそこまで疲れない。疲れても走らない日で回復できる。そんなわけで、走る日に多少無駄がある動きをしていて疲れても問題ないのです。だから、無駄がなくなるように改善されません。
一方、練習量が月に300km,400km,500kmと増えてくるとどうでしょうか。おそらくこの辺りまで来ると毎日走っている状況になってくるでしょうし、そうなると走りながら体を回復させる必要が出てきます。
そうなれば脳は楽をしようとします。つまり、無駄な動きを無くそうと神経回路が変わっていくのです。体が勝手に余計な動きを間引いていってくれる、つまり引き算をしてくれるのです。というより、練習量が増えるともはや無駄な動きをしていられなくなるのです。
これは実際に練習量を増やしてみるとよくわかると思います。練習量を増やしている最中って、最初はものすごく脚が重くなったり、疲労感が強くなる時期があります。
そういう時期に意識的に走り方を変えようとか、もはや思えないです。なるべく楽に走りたい、ということを考えるようになります。これが大事なんです。その状態の中でも走ることで、勝手に楽な走りというものが形成されていくのです。なので、走る頻度と走る量を増やしていくというのは、ランニングフォームに引き算を起こし、余計な動きを省いていくことにとても有効なのです。
ちなみに、ある動作の頻度が増えると自然と効率化される、というのは、直感的にもお分かりいただける話かと思います。
例えばあなたが日本人であれば、お箸を使うことは何の問題もないですよね?ですが、外国人であればお箸を使うのは苦労します。それは、人生においてお箸を使う回数が圧倒的に違ったからです。
人間の脳と体は、基本的に「よく使う動き」に関してはなるべく頑張らずに、楽にできるように効率化していくようにできているからです。走り方についてもこれと全く同じ原理が働くというわけです。
そもそもの「動きの引き出し」という問題点
では、走る量と頻度だけ増やしていけば、理想的な走り方になるのか?答えはイエスでもあり、ノーでもあります。
まず、練習量と頻度を増やすだけでほぼ問題ない走りになるでしょう。先述の通り、無駄を勝手に間引いていって、楽な走りが手に入るからです。
ですが、一方で理想的かというとそうとも限りません。というのも、練習量を増やし、走る動きを反復して得られる走り方は、あくまで「今あなたの中に記憶されている動き」から作られたものだからです。
確かに練習量と頻度を増やせば、楽な走りにはなります。ですがそれは、あなたの脳と神経回路に記憶されている動きの中から最適な走り方が出ている、という状態です。つまり料理で例えるなら「今冷蔵庫に入っているものの中で、最適なものを作りました」ということ。あるもんでなんか作るわ、が最高レベルに達したみたいな感じですね。
ではそもそも冷蔵庫の中に素材が全然入っていなかったら・・?当然そこから出てくる走り方は、それに準じたものとなります。要するにこれまでの人生の中で運動経験があまりない方であればあるほど、脳と神経回路の中に記憶されている「動きの材料」が少ない状態なんです。
陸上経験者はもちろん、サッカーやバスケットボール、野球などの球技出身者の方も、人生の中で色々な動きをやってきたと思います。つまり動きの材料が多いのです。だから、そのまま練習量さえ増やせば理想的な走りになる可能性が高いです。
ですが運動経験自体あまりない方や、運動していた時からあまりにもブランクが空いた方は、動きの材料がそもそも少ないので、練習量や頻度をただ増やすだけでは理想の走りにはならない可能性はあります。むしろどこかに負担のかかる走り方が反復され、故障してしまうことも考えられます。
そうならないためには、練習量を増やしていくことは前提としつつ、それと同時に他から別の要素を持ってくる必要もあるのです。その別の要素というのは、走る以外の動きです。つまり、動きづくり(ドリル)や筋トレなど、色々な動きをやるのです。
これらは一見走るとは関係しないようなイメージはあるでしょう。ですが、それが大事なのです。なぜなら、走る動き以外の刺激を体にかけることで、体の中により豊富な動きの材料が蓄えられ、それがあなたの脳と神経回路が理想の走りを作り出す際に使われるからです。
ですから、運動経験があまりない方やブランクが長い方(10年以上運動していなかった方)は、こうした動き作りや筋トレにも部分的に取り組むことをお勧めします。
ちなみに、動きづくりについてはYouTubeを検索すれば色々出てきます。気になったものをやっていただければ良いと思いますが、大事なのは適当にやることではなく、ちゃんと「意識の先」を明確にして行うことです。
この動き作りではどこに意識を向けたら良いのか?また、どんな目的を持って行えば良いのか?をちゃんと理解して行うことが重要です。それをとりあえず週に一回からでもやってみて、慣れてきたら週2回、という感じで増やしていくと良いでしょう
なお、どんな動き作りをやったら良いかわからない、やるとしても何を意識したら良いのかわからないという方には、私が講師を務めている講義「長距離ランナーの為の走り方改善講義2」をご受講いただくことをお勧めしたいと思います。
ここからは「走り方改善講義2」という私の講義についての紹介をさせていただきます。もしあなたが、自分にとっての理想的な走り方に近づきたい、そのための情報が欲しいと思われているなら、必ずこの先もお読みください。
まず大前提の話をすると、800mからフルマラソンまでの距離を走る、全ての中長距離ランナーにとっての走り方(=走技術)は、走力を決める要素全体の5%〜10%にしかすぎません。
にもかかわらず、なぜ今回私がこうしてこのような講義を作ったのか?それには明確な理由があります。それは、その5%〜10%の部分を改善することで、今よりももっと楽にタイムを向上させられるランナーさんがとても多いことに気づいたからです。
中長距離ランナーの走力を決める要素の中で最も重要なのは、エネルギーを生み出すための「代謝システム」の効率性と、あとは最後まで元気に走り続けるための脚の筋持久力です。これらの能力が低ければ、どうにもなりません。なので、必死にこれらの力を高めるために鍛錬を積む訳です。
ですが、せっかくこのような力を鍛えたとしても、走技術が足りなくて、生み出したエネルギーを無駄にしてしまっていたらどうでしょうか?
例えば、長距離走やマラソンにおける走り方では、「力み」が何よりの大敵です。どれだけ余計な力を抜いて、余計な動きを排除できるかも立派な走技術なのです。フルマラソンに限らず、例え800mや1500mという距離であっても、ほんの少しの力みから生じる力の浪費によって、レースが台無しになることも珍しくありません。かつて私は中学生時代、人生初の800mレースを走った時に、まるで短距離走を走るかのような力感で最初の100mから疾走したところ、中間点の400mを過ぎることにはもう体は限界を迎え、最初の400mは64秒に対し、次の400mは80秒を要し、2分24秒でフラフラになって帰ってきました。たった800mという距離であっても、ほんの少しの力みだけでレース全てが台無しになるのです。
また、あまりにも走りに無駄が多かったり、余計な力みがあることで、本来なら42.195kmを元気に走り切れるだけの代謝システムや筋持久力を持っているにもかかわらず、35kmで足が売り切れ、エネルギーも切れてフラフラでゴールまで帰ってくる羽目になってしまったらどうでしょうか?
悔やんでも悔やみきれませんよね。実はそういう問題こそ、走技術があることで解決できるのです。走技術は持っているもの以上を出す為のものではありません。ですが、鍛錬により身につけた力を100%発揮するためには必要不可欠なものなのです。
本講義では、長距離ランナーにとっての「良い走り方」になるために知っておくべき理論から、実際に走りを変える動き作りの実演解説まで丸ごと解説しています。
具体的な内容は以下の通りです。
最初にお伝えしたいこと
何を目指していくのか?
長距離ランナーにとっての良い走りとは?
「力み」とはなんなのか?
良い接地とは?
正しい反発の使い方とは?
理想のピッチについて
良い走りとはいかにして得られるのか?
動きづくりなどの補助的トレーニングを行う意義
良い走りになると何につながるのか?
動き作りをやる上での注意点とポイント
動きづくりのやり方(いつ、どれくらいやったら良いのか?)
実演:動的ストレッチ/体操
実演:動的ストレッチ/ブラジル体操
実演:リラックスして楽に走る為の歩きジョグ
実演:上下の連動を推進する骨盤ドリル
実演:運動神経を開発するスキップドリル
番外編:レース当日、トイレ待ちやスタートラインの待ち時間でウォーミングアップ代わりにできること
※約2時間の講義動画と講義資料のパワーポイントをPDF形式でご提供予定
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・走り方が改善し、楽に、かつ綺麗に走れるようになる
・トレーニングやレースで疲れにくくなる
・800mからフルマラソンまでの中長距離全般のタイムが少し伸びる
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ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤哲也
よくある質問
質問:講義者は誰ですか?
回答:講義者はウェルビーイング株式会社副社長の深澤哲也です。洛南高校時代には京都府高校駅伝区間賞を獲得し、高校引退後8年のブランクを経て今は自身も市民ランナーとして真剣に走りながら、真剣なランナーさんが劇的成長する為の情報発信、メールサポート、練習会の運営などを手掛けています。また、最近は中学生のコーチも行っており、直近3年間で全国大会優勝者、滋賀県中学記録保持者(800m,1500mの2種目にて)、滋賀県チャンピオン4名を輩出しています。自己ベストは、マラソンは2時間29分44秒、ハーフマラソンは1時間8分21秒、自身が運営するYouTubeチャンネルらんラボ!は約45,000人の方にチャンネル登録いただいています。
質問:講義はどのようにして視聴出来るのでしょうか?
回答:ユーチューブに限定公開しており、ご購入頂いた方にはこちらの講義のURLが記載された講義資料をPDFファイルでお届けさせて頂いております。
質問:ウェルビーイング株式会社ってどんな会社ですか?
回答:2020年に国内外の様々なロードレースで優勝し、国立大学帰宅部生として独立独歩で練習してハーフマラソン63分09秒を記録した池上秀志が「オンラインに存在する日本一の学び場」をモットーに設立した会社で4年間でのべ8000人のお客様を抱え、無料のサイト利用者も含めると現在は月間でのべ約4万人の方にご利用頂いております。ロンドンオリンピック男子マラソン代表の藤原新さん(マラソン2時間7分48秒)からも「ここでしか学べない質の高い学び」と大絶賛して下さっています。
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受講者様からの声
走り方は引き算で無駄のない走りを取り入れると言う事がとても役立ちます!早速今日の走りに取り入れました。とても楽に走れたと思います。私の場合は20%くらいは向上が見込めそうです。今後ともよろしくお願いします。
ー中野 誠二 様(50代男性)





























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