マラソンサブ3=3時間切というのは、多くの市民ランナーにとっての憧れであり、また目標地点であるかと思います。
実際、サブ3というのは家庭に仕事に奔走する市民ランナーにとってはかなりすごい数字で、マラソン完走者の中の3%程度しかいないとも言われている、一つの勲章であると思います。
さて、このサブ3が間近な人はともかく、まだいまいちイメージが掴めないけれど、いつか達成してみたいよなぁ…という人も少なくないと思います。また、すでにサブ3目前まで来てはいるんだけど、何故かいつもギリギリ切れないんだよなぁ…と心が折れそうになっている方もおられると思います。
今回はそういった方のお役に立てればと、サブ3するために大切な走り方(=走りの技術)のポイントについて解説していきます。
〜サブ3の走りとは?〜
まずは「サブ3」と聞いて、皆さんはどのような速さをイメージされますか?ここで、サブ3を分解して考えてみましょう。サブ3というと、5kmは21分15秒、1kmは4分15秒のペースです。
このペースを聞いて、「速いなあ…」と思う方は要注意。そう思っている方は、サブ3ペースで走った時に何かしら余計な力が入ってしまっている可能性が高いです。
実際に「頑張ってサブ3ペース」という感覚を持ってしまうと、極端な話、こういう走りになってしまいます。
これは一見躍動感があって速そうには見える走りだとは思いますが、実は無駄の多い走りなんです。詳細は過去の動画で解説しているので割愛しますが、マラソンでサブ3を目指す上で、実はここまで大きな動きって必要ないんです。
じゃあサブ3ペースで無駄のない動きって、どんなもんなの?と思いますよね。もちろん、見本をお見せいたします。それではご覧ください、これです↓
この走り、見ようによっては1km5分くらいに見えませんか?でも、実は4分15秒ペースなんです。驚くほどにゆったりとして見えますよね。
何故これがゆったり見えるかというと、余計な力が抜けているからなんです。この力の抜き加減で4分15秒ペースで走るということが、サブ3をする上では重要になってくるということです。
では、ここからはその走り方のポイントを3つに絞って解説していきます。
〜サブ3の為の走技術〜
・ポイントその①:上半身のリラックス
まずは肩周りの力を抜くことが重要です。肩周りに余計な力が入っていると、無駄な消耗を引き起こすことはもちろん、腕を振り子のように使うことが難しくなり、スムーズな腕振りを阻害してしまいます。なんとしてもアイアンマンのような怒り肩で走るのは避けなければなりません。
そのためには、腕を抱え込みすぎないことが重要です。人によって腕の位置は好みがありますが、基本的にはゆったりと抱え込まずに走る方がリラックスしやすいです。
さらに肩周りの力を抜くためには、肘から先の部分を少し遊ばせるのがポイントです。肘のところをプロレスラーの極め技ばりに固めてしまうと、これも確実に変な力みが発生します。
手首の先は、プランプラン。有名選手でイメージするならば、設楽悠太選手のようなイメージですね。肘先に余計な力を入れない、そして腕を抱え込みすぎず肩周りに余裕を持つ。この意識ですね。
苦しくなったらプランプラン。
・ポイントその②:足をうまく流す
先程の動画で、脚の動きに注目してください。足が地面に着いたあと、流れるように後ろに行っていると思います。このように上手く脚を後ろに流すということは、サブ3達成のためには一つ大切なポイントになります。
一般的に「脚が流れる」と聞くと、なんだか悪いことのような気がする方も多いと思いますが、実は全部が全部そうではありません。脚が後ろに流れることで問題なのは、脚が後ろに行った後、その脚が前に返ってこないということです。後ろに行った脚を、素早く前に返してくることができれば、何も問題がなく、むしろ後ろのストロークが大きくなることでその分ストライドもある程度大きく確保でき、より推進力としては大きなものが生まれてくると思います。
脚を上手く前に返してくるための方法としては、一つは脚を着地と同時に上手く後ろに流して、最後蹴る意識を持たずに、回転させて速く前に返してくる感覚を意識することです。これは平地で走る中では難しい部分もあるので、どちらかというと登坂走などを行って、自然に脚が前にすぐ返ってきやすい状況で走って体に覚え込ませるというのも有効です。
もう一つが、後ろに戻った脚を素早く前に引き戻してくるためには、やはり体幹部分の安定は非常に重要になってきます。脚を引き戻す作業は、脚だけの問題ではありません。上半身との連動の中で、脚が素早く回転して、脚の「返し」もつられるようにして素早くなるのです。
ただ、上半身との連動を図るうえで、体の中心部分に何も芯が無いような状態であると、支点となる部分が無いため、ただひたすらに体がぶれてしまい、上下の動きがてんでばらばらになってしまうことになります。建物を建てる時に、頑丈な柱をしっかりと通すように、体の中心に支えとなる柱(=体幹力)を身に付けることが、結果的に脚の回転をスムーズに促すポイントになります。
体幹力を向上させるには、普通に走るだけでは補いきれない部分が多いため、体幹トレーニングを実施することをおすすめします。弊社からも「ブレない走りと綺麗な体を手に入れよう!ランナーの為の体幹補強DVD」を販売しており、実際にこれをやりはじめてから明らかに走りが綺麗になった(ついでに体もイイ感じになりましたとのこと・・)というお声をたくさんいただいていますので、興味のある方はこちらから詳細をご覧ください。
・ポイントその③:骨盤を真っすぐにする
マラソン大国であるケニアのランナーの走りを観察していると、ある共通した特徴に気が付きます。それは、須らく美しい前傾姿勢で前に進んでいるということです。そして、そんな彼らの骨盤に着目すると、これまた少し前に傾いたような形をとっていることが多いです。
そんな走りを見ていると、自分も骨盤から前傾させるような走りをして、前への推進力を得て走った方が良いのではないかと思うこともあるかと思います。ですが、多くの日本人の場合、サブ3~サブ2.5レベルを目指していくうえでは、骨盤は真っすぐにして無理な前傾姿勢を作らないほうが良いと考えています。
主な理由としては、骨盤を真っすぐな状態に近づけて、姿勢もなるべく真っすぐにした方が、後ろストローク(後ろへ脚を大きく流せる)が大きくなるため、自然と無理なくストライドが伸びるうえに、ハムストリングスや臀部の筋肉など、大きい筋肉を使って走れるようになるので、マラソン後半の余裕度が変わってくるからです。
何より多くの日本人にとっては、骨盤を真っすぐにする姿勢の方が骨格的に合っていることもありますし、先述の通り、サブ3するためにはいかに力を抜いて4分15秒ペースで走り続けるかが大切ですので、無理のない姿勢を取るということは大変重要なことです。
さらにはある程度のペースで走ろうとすると、自然に前傾姿勢になりやすいので、意識としては真っすぐの姿勢を取ることを意識した方が、結果的に消耗の少ない楽な走り方につながることが多いです。
というわけで今回はマラソンでサブ3以上を目指すための走技術という点についてのお話でした。ただ、やはりあくまでサブ3を目指すうえで最も本質的に重要になってくるのはトレーニングです。走技術とは、積み上げてきたトレーニングの成果をいかんなく発揮するための一つの要素にすぎないことをご承知の上、今回のお話を役立てていただけますと幸いです。
最後に、本気でマラソンサブ3からサブ2.5を目指していきたい方へのお知らせです。
競技者としては大阪マラソン日本人トップ、そして現在も年間数百人の市民ランナーを指導し、すでに多数のサブ3、サブエガ達成者などのエリート市民ランナーを輩出しているプロランニングコーチ・池上秀志の著書「マラソンサブ3からサブ2.5の為のトレーニング」。
こちらはマラソンの要素を分解して解説した原理原則から、サブ3やサブ2.5を目指していくという目的に特化したトレーニングの具体的な方法論まで網羅的に解説した、サブ3以上を目指すランナーのためのロードマップです。
こちらの書籍をお読みいただくことで、マラソンの本質を理解し、サブ3からサブ2.5のレベルを目指していく上で自分のなかでの指標ができて、そのレベルを目指すうえでやらなければならないことが非常に明確になります。また、筆者の考える具体的なトレーニングプランも掲載しているため、それを自分用に少しアレンジすることで、すぐにご自身のトレーニングに取り入れ、実践できることも大きなメリットです。
こちらの書籍ですが、現在200部限定で第三版を販売しています。書籍の冒頭部分を無料で公開していますので、まだご覧に成られていない方は、ぜひ下記URLをクリックして詳細をご確認ください。
Comments