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サブ3できそうでできない人の特徴


 「サブ3するのはもう、時間の問題やろうなぁ・・」


 周りから見ても、またその本人までもがそう思いながらも、その後中々サブ3が達成できないというランナーさんは案外多いものです。特に3時間半を切ってくると、そのまま勢いづいてサブ3予備軍のレベルに入ってくる人が多いのですが、そこから3時間を切るまでに壁に当たってしまう方が多いように思います。


 こういった、サブ3が目前に迫っているにも関わらず、その後年単位でサブ3更新まで行き着けないランナーさんには、どういった特徴があるのでしょうか?


 結論から言えば、こういったケースの場合、その多くが「スピード持久力の不足」が原因だったりします。スピード持久力と言うと、ちょっと曖昧な表現かもしれません。もう少し厳密に言えば、最大スピードからどれだけ落とさずに走り続けられるか、という力がスピード持久力です。


 このスピード持久力がつけば、当然MAXのスピードに近いペースで走り続けることができるので、目標のレースペースで走り続ける力も向上していきます。ただ、サブ3が目前に迫っているけれど、中々3時間を切ることができない人には、このスピード持久という要素が不足している人が少なくないです。


 まず、サブ3がある程度見えてきている人は、スピード自体は足りていることが多いです。その前に、そもそもサブ3するにはどれくらいのスピードが必要なのか?ということを理解する必要があります。


 フルマラソンにおけるスピードを考えるときの尺度は「5000mの走力」です。100mのスピードではありません。もちろん、100mが速ければ、自分の最大値が高まることを意味しますので、有利であることは間違い無いです。しかし、100mの全力の動きというのは、マラソンでは絶対に使わない動きです。力の出し方も全然違います。つまり、100mが速いことは、フルマラソンとは相関関係がほぼ無いのです。


 これがどれくらいの距離から相関関係が強くなってくるかというと、大体5000mあたりです。1500mくらいだとまだちょっとフルマラソンとは違った動きになるでしょう。5000mが速い人は、往々にしてフルマラソンも速く走れるケースが多いですし、フルマラソンを走ったことがなくても潜在能力的には高いと言えます。


 では、サブ3するには5kmはどれくらいで走れるべきなのでしょうか?結論から言えば、19分45秒〜19分15秒の間くらいになります。間をとって、19分30秒としましょう。


 この数字の根拠を説明します。まず、フルマラソンを3時間以内で走るには、1kmあたりは4分15秒、5kmあたりは21分15秒で走り続ける必要があります。この21分15秒というペースから、最低1分30秒の余裕が作れればそのままフルマラソンを走れる、という算段です。


 実際これは多くのランナーがこの範疇に当てはまっています。例えば、マラソン全日本記録保持者の大迫傑選手だと、5000mのベストタイムは13分8秒です。で、フルマラソンは2時間5分29秒です。つまり、5km辺り14分52秒というペースが平均となります。


 大迫選手の場合、フルマラソンのベストタイムのペースが、5000mを一本全力で走った時のタイムから見て1分42秒の余裕があります。非常に妥当なラインの数字であることがわかります。


 他の人の例も出しましょう。弊社の代表の池上秀志は、5000mのベストタイムは14分20秒です。フルマラソンは2時間13分41秒なので、5kmは15分50秒ペースです。見事ピッタリ1分30秒の余裕があるということになります。


 ご覧の通り、しっかりスピード持久力があれば、5kmあたりのペースが、全力で5000mを一本走った時から大体1分30秒〜2分の遅れではフルマラソンを走ります。しかし、スピード持久力が足りていないと、この時の「落ち率」が大きくなってきます。つまり、1分半とか2分の落ち率では効かなくなってしまうのです。


 わかりやすいように私の例を出しておきます。私の5kmの社会人ベストは15分36秒です。フルマラソンは現時点で2時間36分14秒なので、5kmは18分30秒ペース。あれ?3分近くも空いているな・・・


 こういうことなんです。本来スピード持久力があれば2分くらいの差では走れるはずなのに、3分も空いてしまうということはスピード持久力が不足しているということになります。そして、サブ3を達成できそうでできない人は、この落ち率が大きい人が多いのです。逆に言えば、すでに5000mを19分30秒で走る力があるなら、そこからスピードをガンガン鍛えていく必要はそこまでなく、むしろマックスのスピードからいかに落とさずに走り続けられるかということに注力した方がいいのです。


 ちなみに、一応自分のフォローとして入れさせていただくと、私のフルマラソンのタイムは距離走がてら走った時のタイムなので、妥当な力で言えば2時間28分〜29分くらいかと思っています(ハーフマラソン68分21秒から見て)。それであれば5kmは17分30秒〜40秒あたりになるので、5kmの全力の力からは大体2分落ちくらいになります。まあ、これくらいが妥当かなと思います。2月25日の大阪マラソンでちゃんと普通に走れたら・・


 おわかりいただけましたか?つまり、5kmで19分30秒の力があるにも関わらず、マラソンでサブ3ができていない人はスピード持久力の方に伸び代があると思っていただいて大丈夫です。別に、19分30秒で走れるからといって、5kmの走力アップの取り組みをしなくていいというわけではありません。もちろん5kmももっと速く走れるようになれば、余裕土が上がりますのでそれはそれで力を入れたらいいでしょう。しかし、5kmのマックスの力を上げるのと、マックスからいかに落とさずに走れるか、という力を上げるのとどちらが楽か、コスパ的にいいかということはご自身の中で考えた上でトレーニングに取り組まれると良いかと思います。


どうすればスピード持久力がつくのか?

 スピード持久力とは、速い話が「速いペースで押し続ける力」です。それを身につけるための方法はまあ、色々とあるのですが、今日は四つの方法を簡単に紹介させていただきます。



1、LT付近での持久走やインターバル


 LTとはつまり、乳酸性閾値のことです。走っていて、あるポイントから血中乳酸濃度が一気に上昇するポイントがあるのですが、その付近のペースで走り続けることで刺激をかけるという方法です。


 LTペースは通常、結構きついペースになります。レースの距離でいうなら、ハーフマラソンのペースです。ハーフのレースって、まあまあ速いペースで押していくじゃ無いですか?あの感覚でのペース走だったり、もしくはロングインターバル、基礎構築期ならファルトレクなどを繰り返し行なっていくと良いでしょう。


 速いペースである程度長く走るというトレーニングになるので、苦しい中でうまくエネルギーを生み出す力もつきますし、また苦しい中でうまく力を抜く走技術も身に付きます。こういう練習は一人でやるのは大変ですが、裏を返せば一人でできるくらいの強度がちょうどいい、という見方もできます。やれる範囲で頑張ってみましょう。


 

2、距離走

 

 なんだかんだ言っても距離走をしっかりやっていると、スピード持久力は向上していきます。フルマラソンに向けては特に距離走が一番大事な練習になりますが、この距離走をしっかり積み上げることでも速いペースで走り続ける力は向上します。


 何より、長い時間接地の衝撃に耐え続けるということをすることで、脚の筋持久力がついていきます。速いスピードで維持するためには、なんと言っても着地の衝撃に耐え続けられなければ話になりませんので、定期的な距離走は必須になってくるでしょう。



3、中強度の持久走


 これは何気に重要で、かつこれがどれだけ詰めてできるかということが、スピード持久力向上の鍵になってくると言えます。中強度というのは、あくまで主観的な測り方なのですが、言葉にするなら「翌日に疲労を残さないレベルで、かつ毎日やれと言われたらできる強度」です。


 もっと簡単な言葉で言えば、楽でもなくキツくもなく、というくらいです。その練習で疲労回復は難しいけれど、でも翌日にスピード練習や距離走をやれと言われたらできるな、くらいの強度でのランニングです。


 この中強度の持久走をコンスタントにできるようになっていき、かつその距離が延びていけばとても回復力が向上していると思いますし、必然的に筋持久力も心肺機能も満遍なくレベルアップしているはずなので、結果としてスピード持久力が向上しているでしょう。


4、練習量


 なんだかんだこれは重要です。練習の総量もそうですが、練習の密度も重要です。練習の密度が高ければ、練習と練習の間の休養時間が短くなるので、必然的に回復力も上がります。


 回復力の向上は、基礎体力の向上です。基礎体力が高くないと、そもそもスピード持久力もクソもないという話になります。具体的には、サブ3を目指すならやっぱり月に250km以上は走れていた方がいいでしょう。その理由は、走行距離が増えることで上記で紹介したようなメニューも色々と入れることができますし、さらに基礎体力が向上することでトレーニング刺激に対する体の適応能力も上がります。


 やったトレーニングの刺激に対して、体が適応しなければ、トレーニングの効果は得られません。ぜひできる限り練習の密度を高くして、回復力を高めていきましょう。



 いかがでしたか?今日は一例を挙げさせていただいたのですが、このようなトレーニングに加え、休養日のジョグだったり、できる限り高い密度でのトレーニングを積み上げていくことで、スピード持久力は向上していきます。


 特に、今日例に挙げた大迫選手や池上は月間走行距離も相当多いはずです。多いときは月間1000km近く走るようなこともある選手ですので、それだけの練習をやっているとやはり必然的にスピード持久力が向上しているでしょう。


 市民ランナーであれば、月間300kmでも多い方になりますので、つまりそれだけ走れたら人よりもスピード持久においては優れることができるチャンスがあります。そうなれば、周りの同じくらいの力のランナーをどんどん追い抜いて、いち早くサブ3に到達できる可能性も上がるでしょう。5kmで19分30秒で走れるなという感覚がもしあるなら、ぜひスピード持久力の向上にもチャレンジしてみてください。



 最後にお知らせです。弊社大人気書籍「マラソンサブ3からサブ2.5の為のトレーニング」が、昨日より200部限定で再入荷して販売しております。


 本書はタイトルの通り、マラソンでサブ3以上を目指したい方に向けて書かれた指南書です。これからサブ3、その先を目指していきたいという真剣なランナーの方は、必ず下記より詳細をご確認ください。







ウェルビーイング株式会社副社長

らんラボ!代表

深澤哲也

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ランニング書籍

講師紹介
​ウェルビーイング株式会社代表取締役
池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

​ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤 哲也

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経歴

中学 京都市立音羽中学校

高校 洛南高校

↓(競技引退)

大学 立命館大学(陸上はせず)

​↓

大学卒業後

一般企業に勤め、社内のランニング同好会に所属して年に数回リレーマラソンや駅伝を走るも、継続的なトレーニングはほとんどせず。

2020年、ウェルビーイング株式会社の設立をきっかけに約8年ぶりに市民ランナーとして走り始る。

感覚だけで走っていた競技者時代から一変、市民ランナーになってから学んだウェルビーイングのコンテンツでは、理論を先に理解してから体で実践する、というやり方を知る。始めは理解できるか不安を持ちつつも、驚くほど効率的に走力が伸びていくことを実感し、ランニングにおける理論の重要性を痛感。

現在は市民ランナーのランニングにおける目標達成、お悩み解決のための情報発信や、ジュニアコーチングで中学生ランナーも指導し、教え子は2年生で滋賀県の中学チャンピオンとなり、3年生では800mで全国大会にも出場。

 

実績

京都府高校駅伝区間賞

全日本琵琶湖クロカン8位入賞

高槻シティハーフマラソン

5kmの部優勝 など

~自己ベスト~

3,000m 8:42(2012)
5,000m 14:57(2012)
10,000m 32:24(2023)
ハーフマラソン 1:08:21(2024)

​マラソン 2:36:14(2024)

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