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レナト・カノーヴァのマラソントレーニングメソッド

 以前にもレナト・カノーヴァのマラソントレーニングについて記事を書いたのですが、今回は改めて、新しく入手した資料をもとにレナト・カノーヴァのトレーニングについて記事を書いてみたいと思います。改めて紹介しておくと、コーチカノーヴァは現在ロードレースで最も成果を出しているコーチの一人です。

レナト・カノーヴァのマラソントレーニングの捉え方

 レナト・カノーヴァのトレーニングは煎じ詰めれば、以下の点に要約することができるように思います。

・有酸素パワーの向上

・無酸素性閾値の向上

・走技術の向上

・乳酸性閾値の向上

・マラソンレースペース走行時におけるグリコーゲン利用量の減少

・マラソンレースに耐えうる脚筋と集中力

 このように見ていくと、あくまでも基礎的な運動生理学の知識の組み合わせであり、理論的には、何も特別なことはありません。あくまでも運動生理学的な要素に分解して、トレーニングを捉えているだけです。ちなみにコーチカノーヴァは現役時代は10種競技の選手で長距離選手ではありません。前回の記事で紹介したブラザーコルムとともに人体について深く理解している指導者なので、そういった観点からも総合的なアプローチをしています。問題は上記の要素を達成するために彼がどのようにアプローチしているかということですが、今回はそれを見ていきたいと思います。

トレーニングの期分け

 まずは、コーチカノーヴァのマラソントレーニングの期分けの仕方をみていきたいと思います。コーチカノーヴァのトレーニングの一つの特徴として特異性が頻繁に挙げられます。確かにコーチカノーヴァはとてもレースの負荷に近いトレーニングを行うことで有名な指導者なのですが、だからと言っていつもいつもレースに近い負荷をかけ続けている訳ではありません。彼のトレーニングの期分けは以下のようになります。

・一般的準備期 6−8週間

・基礎的準備期 8−10週間

・特異的準備期 6―8週間

 それぞれ順番に何を目的としているのかをみていきたいと思います。

一般的準備期

 この期間は持久走を中心に脚筋を戻すことを目的としています。基礎的な持久走とともにスプリントやジャンプ系のトレーニング、ジムワークなどを組み合わせ、筋力を戻していき、故障しにくい体を作ります。

基礎的準備期

 基礎的準備期においては、有酸素パワーの強化に重点を置きます。また同時にこの期間に無酸素性閾値の向上やマラソンのための基礎的な脚筋力の向上にも重点が置かれます。この期間は外在的な強度よりも内在的な強度に重点が置かれます。外在的な強度と内在的な強度の違いは、外在的な強度というのは実際のタイムのことです。例えば、レースの二ヶ月前を切ってから思うようなタイムでトレーニングができなければ、そのトレーニングは途中で切り上げます。なぜなら、それ以前に内在的な負荷をかけるようなトレーニングはしっかりとやっているからです。一度基礎的準備期に、内在的な負荷をかけているので、それ以降の段階ではより緻密にレースに向けたシュミレーションとして練習は捉えられ、想定するタイムをクリアできない状態で、練習をすることに意味はありません。

 逆に言えば、基礎的準備期においては内在的な負荷こそが重要なので、途中で練習を止めるよりも感覚に従って走り始めて、最後まで練習をやりきることが重要になります。そして、この期間は走行距離も増やしていくので、体が疲れ切ってしまうことも多く、思うようなタイムでトレーニングをこなせないことも想定の範囲内としなければいけません。

 この時期は総走行距離も重要であり、総走行距離を増やしていくことが、有酸素能力の向上に繋がります。ただし、以前考えられていたように、ゆっくり長く走れば毛細血管が発達し、競技能力の向上につながるという考えには、コーチカノーヴァは反対です。持久走といえども、マラソンペースの80%程度のペースを目安としています。これが75%ならダメなのかといえば、そうともいえませんし、厳密に何%とはいえないのですが、いずれにしても60%ではありません。

 ちなみにゆっくり走って走行距離を増やしてもトレーニング効果がそれほどないということは私が過去にコンスタントに月間1000km走り、一番多い時で1200km走った経験からもそういえます。ただし、反対に持久走はどうでもよくて、週に2回くらいのハードな練習だけ頑張っとけば強くなれるという考えにも私は反対です。これは私の個人的な経験からの意見です。

 基礎的準備期のトレーニングは、有酸素パワーと有酸素レジスタンスの両面からのアプローチとなります。用語が少し難しいので噛み砕いて説明すると、マラソンとは結局のところ、全身の循環器系が酸素を用いてどれだけ効率よくエネルギーを作れるかどうかと、エネルギーを作れたとして、実際にランニングの時に使う筋肉が耐えられるかどうかです。もう少し短い言葉で言えば、呼吸循環器系と脚筋の二つの要素から構成されます。

 呼吸循環器系が有酸素パワー、脚筋が有酸素レジスタンスのことだと思ってください。この期間の有酸素パワーの向上を目的としたトレーニングは以下の通りです。


 こちらは有酸素レジスタンスを目的としたトレーニングです。


特異的準備期

 一般的準備期と基礎的準備期が終わるまでに約四ヶ月を要します。ここから、特異的準備期が約二ヶ月あるので、ここからコーチカノーヴァもマラソンで最良の結果を得るのは約半年の準備期間が必要であり、そこから得られる結論はマラソンは年に二本以上は走れないということです。特異的準備期ではよりマラソンに向けての実戦的な練習に入ってきます。コーチカノーヴァいはく、レースの半分以上の距離で、レースペースの95%以上のトレーニングのみが特異的なトレーニングに該当するそうです。マラソンのための特異的な練習は以下の通りとなります。


 さて、ここまでコーチカノーヴァのマラソントレーニングについて解説をしてきました。コーチカノーヴァのトレーニングも他の指導者と同様にシステマチックに組み上げて行っています。様々な雑誌や記事に載るトレーニングというのは、結果を出した選手の最も良かった時の練習が載っているのですが、どんな一流選手もそのトレーニングをこなすためにシステマチックにトレーニングを組み、またランニング以外の様々なものを捨ててランニングに集中し、精神的な準備もして臨んでいるということを忘れないようにしてください。

追伸

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ランニング書籍

講師紹介
​ウェルビーイング株式会社代表取締役
池上秀志

経歴

中学 京都府亀岡市立亀岡中学校

都道府県対抗男子駅伝6区区間賞 自己ベスト3km 8分51秒

 

高校 洛南高校

京都府駅伝3年連続区間賞 チームも優勝

全国高校駅伝3年連続出場 19位 11位 18位

 

大学 京都教育大学

京都インカレ10000m優勝

関西インカレ10000m優勝 ハーフマラソン優勝

西日本インカレ 5000m 2位 10000m 2位

京都選手権 10000m優勝

近畿選手権 10000m優勝

谷川真理ハーフマラソン優勝

グアムハーフマラソン優勝

上尾ハーフマラソン一般の部優勝

 

大学卒業後

実業団4社からの誘いを断り、ドイツ人コーチDieter Hogenの下でトレーニングを続ける。所属は1990年にCoach Hogen、イギリス人マネージャーのキム・マクドナルドらで立ち上げたKimbia Athletics。

 

大阪ロードレース優勝

ハイテクハーフマラソン二連覇

ももクロマニアハーフマラソン2位

グアムマラソン優勝

大阪マラソン2位

 

自己ベスト

ハーフマラソン 63分09秒

30km 1時間31分53秒

マラソン 2時間13分41秒

​ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤 哲也

IMG_5423.JPG

経歴

中学 京都市立音羽中学校

高校 洛南高校

↓(競技引退)

大学 立命館大学(陸上はせず)

​↓

大学卒業後

一般企業に勤め、社内のランニング同好会に所属して年に数回リレーマラソンや駅伝を走るも、継続的なトレーニングはほとんどせず。

2020年、ウェルビーイング株式会社の設立をきっかけに約8年ぶりに市民ランナーとして走り始る。

感覚だけで走っていた競技者時代から一変、市民ランナーになってから学んだウェルビーイングのコンテンツでは、理論を先に理解してから体で実践する、というやり方を知る。始めは理解できるか不安を持ちつつも、驚くほど効率的に走力が伸びていくことを実感し、ランニングにおける理論の重要性を痛感。

現在は市民ランナーのランニングにおける目標達成、お悩み解決のための情報発信や、ジュニアコーチングで中学生ランナーも指導し、教え子は2年生で滋賀県の中学チャンピオンとなり、3年生では800mで全国大会にも出場。

 

実績

京都府高校駅伝区間賞

全日本琵琶湖クロカン8位入賞

高槻シティハーフマラソン

5kmの部優勝 など

~自己ベスト~

3,000m 8:42(2012)
5,000m 14:57(2012)
10,000m 32:24(2023)
ハーフマラソン 1:08:21(2024)

​マラソン 2:32:18(2024)

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