top of page

新庄剛志選手から学ぶスコトーマの外し方

少し前の話ですが、元プロ野球選手の新庄剛志さんが来年の合同トライアルを受けることを表明しました。これに野村克也さんや高木豊さんが無理だと思うという趣旨のコメントをしたりと話題になりました。


新庄選手は「1%の可能性があれば出来る。挑戦しよう」と言っています。私は新庄選手ならもう一度プロ野球選手になれると思いますが、今回の記事のテーマはそこではありません。今回の記事で書きたいことは、新庄選手は現状の外側に踏み出したということです。

世間には多くの成功本や自己啓発本などが出ていますが、致命的な欠陥を二つ抱えているものが多いです。


1つ目は、成功をお金持ちになること、大企業にはいること、企業の中で出世すること、異性にもてることなどと定義していることです。勿論、はっきりとそう書いている本はほとんどありませんが、暗にそういうことを示唆している本ばかりです。もしくは成功というものを定義せずに、スピリチュアルな内容ばかり盛り込まれた本も多いです。こういった本の何が欠点かと言うと、仮にそれを達成したとしても幸せになれるかどうかはまた別の話であるということです。馬車馬のように働いて、世間一般に言われる成功というものを手にした人が「俺の人生とは一体何だったんだろう?」とつぶやくのは珍しくありません。純粋に哲学的問いとして発せられた問いなら良いのですが、たいては後悔の念を込めたつぶやきになってしまいます。


2つ目は、目標を現状の外側に設定しなさいということが書かれていないケースがほとんどだということです。現状の内側に目標を設定してしまうと、かえって自分の能力を制限してしまいます。


あなたは今の自分の成果を110%にするのと、1000%(10倍)にするのと、どちらが簡単に思えますか?目標をどちらに設定するのが、より大きな成果を生むでしょうか?

勿論、ケースバイケースですが、一般的には成果を10倍にする方が簡単で、自分の能力を引き上げてくれます。


えっ?ですよね?


成果を1.1倍にするのは簡単なようですが、成果を1.1倍にしようと思うと今のやり方であとちょっと頑張ろうとします。やり方そのままであとちょっと頑張るのはきついです。もう既に、頑張った後にもうひと踏ん張りするのは誰しもきついです。しかもこのやり方では、成果を更に1.5倍にするためには、あとちょっとの頑張りを更に続ける必要があります。想像するだけでもきついですし、1.5倍くらいになるとそもそも不可能な人が多いと思います。月に24日出勤している人であれば、1.5倍すると出勤日が月に36日になるので、この時点でもう不可能です。


ところが、10倍の成果を出したければ、あとちょっとのやり方では無理です。従って、全く別の考え方をする必要が出てきます。今までとは根本的にやり方を変える必要があるのです。やり方を変えるだけなので、それほどきつくないという訳です。勿論、生みの苦しみは伴います。


しかし、やり方を変えて上手くいったとして、それは本質的に0から何か新しいものを生み出したと言えるでしょうか?


厳密に言えば、前からその方法はこの世界にあったわけです。物理や数学上の大発見も発明ではなく、発見です。この世の法則は宇宙が誕生した時から一切変わっていません。この世の法則を応用して、作り上げた電気も飛行機もインターネットもあらゆるヒット商品もその組み合わせです。


勿論、発明者の独創性、創造性がずば抜けて優れていたことに違いはないのですが、発明しようと思えば、もっと早くできたはずです(あくまでも理論的には)。換言すれば、見ようと思えば見れたのに、見えていなかったということです。限られた理性的存在者である人間に、神の視点を持つことは出来ません。一から何かを作ることは不可能で、一切合切は元からあるものに気付くかどうかです。


この気付けるのに気付けていない部分のことを心理学の用語でスコトーマと言います。スコトーマという言葉は眼科では、視野の一部が欠けてしまう目の病気です。視野の一部が欠けてしまうように、見えているはずのものが見えない、これがスコトーマです。


スコトーマというのは、人間が生きていく上では欠かせないものです。認識できるものすべてを認識しようと思えば、疲れ切ってしまいます。スポーツや仕事、勉強など本気で高い集中を維持しようと思えば、1時間でもかなりきついことからも、これが分かります。プロスポーツ選手は肉体の酷使もさることながら、脳の疲労も半端ではありません(脳も肉体の一部だけれど)。これは競技スポーツの世界では、普段認識に上がらないようなことを全て認識に挙げていくからです。


同じプロスポーツ選手でも、プロ野球選手の方がスプリンターよりも多くスプリントを繰り返します。走り込みを繰り返すプロ野球のピッチャーからすると、スプリンターの練習は楽だと思うかもしれません。でもこれは違います。プロ野球選手が50mダッシュを繰り返すのは、あくまでも基礎練習です。言い換えれば、追い込めていたらOKです。


一方のスプリンターは速く走るための練習です。0.01秒でも速く走るために全神経を集中させて、より多くの筋繊維をより効率よく使おうとします。心身ともに負担が大きく、連日プロ野球選手のキャンプのように走りこむのは不可能です。広岡達郎監督時代の西武ライオンズは、春季キャンプで若手が100mを100本やったそうですが、スプリンターは100m10本ですら、不可能です。それがやれるということは、本気で集中していないということですから、スプリンターとしては、あまり良い練習ではありません(投手の基礎体力作りという観点から、良い練習なのかどうかは私には見当がつきません)。人間は本気で目的意識を持って意識的に集中するか、無意識に任せるかで、同じプロスポーツの選手でもここまで差が出ます。


逆に言えば、疲れずに生きていくために人間はかなりの言動を自動化しています。毎日同じ職場や、学校に通う人であれば、朝起きてから職場や学校につくまでの一連の行動は全てほとんど無意識のうちにやっています。職場についてからの仕事も人間関係も無意識のうちに処理していることが大部分です。


<