「なぜピークを合わせられないのかが不思議です」
- 深澤哲也(ウェルビーイング株式会社副社長)

- 24 時間前
- 読了時間: 16分
「私はよくピーキングのうまさを褒められますが、私からすれば、なぜ箱根に選手のピークを合わせられないのかが不思議なくらいです。」
これは過去12年間のうち、9回の箱根駅伝総合優勝という偉業とも言える結果を出し、近年ではマラソンにおいても名指導者の名を欲しいままにされている青山学院大学の原晋監督の言葉です。原監督は、その後こう続けます。
「大会は1月2日と3日に決まっている。コースも毎年同じです。その時、その場所で、必ず大会が開催されるのですから、そこに向けて逆算をしていけば良いだけなのです。私は春も夏の間もずっと、箱根駅伝を意識して練習メニューを組んでいます。
どんな仕事にも期日があり、そこに向けて逆算して作業を進めていく中で、駅伝だけが例外であるはずがありません。一番大きな目標に向かって、あらゆることを試しながら、組織を一番良い状態に持っていくのです。
箱根で勝ちたければやはり、そこで勝つイメージを高めていくことが重要なのです。」
原監督は著書である「人が替わっても必ず結果を出す、青学流・絶対王者の法則」の中で、このような言葉を書いておられます。

私はこの言葉を読んで、ハッとしました。なぜなら、この言葉は私たち市民ランナーにもそっくりそのまま当てはまるからです。
例えば、特別な場合を除いては、基本的にマラソンのレースの日も決まっています。別府大分毎日マラソンは2月の第一日曜日、東京マラソンは3月の第一日曜日という具合に、大体はレースの日程は決まっています。ずれたとしても、せいぜい1週間くらいの話です。
さらにコースも決まっています。もしかしたら、多少は折り返しの位置が変わったりすることがあるかもしれませんが、基本的には「毎年のお約束」と言わんばかりに、すでに決まっていることなのです。
にも関わらず、そこに向けてピークを合わせられないのはなぜなのか?考えてみると、不思議にも思うものです。もちろん人間の体ですから、そこに合わせるための取り組みをした結果として、調子が合わなかったということはあるでしょう。それは仕方のないことです。問題なのは、そもそも本当にそこに調子を合わせるための取り組みができていないというケースが珍しくないということです。
その結果として生じるのが、本命レースと思って準備していたレースよりも、その前に入れていた距離走としてのレースの方が結果が良かったとか、本命レースの3週間前から明らかに調子が下落して、本命レースの日にはもうかなり調子が落ちてしまった、というような現象です。
本当にそのレースにピークを合わせる取り組みができていたのなら、本来何週間も前にピークアウトしてしまうというのはおかしいのです。人間の体なので、多少の誤差はもちろん出ますが、それでも3週間や4週間も前から調子が落ちてきて、なんていいうのは、そもそもそのレースに向けた取り組み方が間違っていたと考えるのが自然でしょう。
ただし、これはある意味仕方のないことなのです。なぜなら、このようにいわゆる「本命レース」に向けて本当の最高の状態を作るための取り組み方というのは、一般の市民ランナーの世界にはまだまだ流布していないからです。
ちなみに、このように本命レースに最高の状態を作る取り組みのことを「ピーキング」と呼びます。そしてこれは、駅伝強豪校や実業団などでは当たり前のように行われていることです。あまりにも当たり前に行われているため、選手としてはもはや意識すらしていないこともあります。
実際高校生くらいだと、監督がピーキングをしてくれて、選手はそこを信じてついていけば、夏はインターハイ、冬は高校駅伝と年に2回の最高の状態ができて結果を出していた、みたいなことは全然普通にあります。
ただ、その中でもそのピーキングの方法はチームによって様々です。特に青山学院大学に関しては、箱根駅伝に向けてピーキングを徹底している度合いが高いのでしょう。だからあれだけ箱根駅伝では常勝軍団と言われるほどの結果を出しているものと思います。トラックのタイムでは他校の方が全然速いのに、箱根駅伝になったらどこも青学に勝てない。実力以上の力が、当日発揮できて格上の選手にも勝てる。
つまり、自分の力を100%発揮することはもちろん、時に120%、実力以上のものを発揮するような、ある意味では不可能を可能にするようなことができてしまうのが「ピーキング」の本当の威力なのです。
しかし、市民ランナーの世界ではこれは決して普通ではありません。また、ピーキングという言葉自体はどこかで勉強したり聞き齧った方も少なくないと思いますが、本当にこれを正しく理解し、自身のトレーニングに落とし込めている人は多くありません。
少なくとも私が日々トレーニングのご相談を受けている中では、本当にピーキングがうまくできている人はかなり少ないと言っても過言ではありません。もっともハイレベルな方が多いウェルビーイングオンラインスクールの受講生の方でさえ、ピーキングができているかどうかでいうとちょっと怪しいことも多く見受けられます。それくらい、市民ランナーの世界では実はちゃんとできている人が少ないのが、ピーキングというものなのです。
では、このピーキングとは一体どのようにして行っていくのか?これを理解する上で絶対に欠かせない概念として「期分け」というものがあります。
期分けとは?
期分けというのはつまり、1年を時期ごとにいくつかに分け、時期ごとに重点をおくポイントを少しずつ変えていくという考え方のことです。
人間の体というのは、同時期に複数の能力を獲得するのは難しいもので、基本的にそれは無理だと思った方が良いです。例えば、同じ時期に5000mの能力とマラソンの能力を同時に鍛える取り組みは、体にとっては非常に負担が大きく、非常に高い確率でトレーニングに対する不適応を起こしてしまうでしょう。
だからこそ、この時期は土台作りのために走り込んで、この時期はスピードを鍛えて5000mの力を高め、この時期はマラソントレーニングをして体を仕上げよう、みたいな感じで時期を分けてトレーニングの内容を少しずつ変えていくのです。
実際、冒頭でご紹介した原監督は、青山学院大学の期分けについて下記のように語っておられます。
「私たちは1年間を3か月ごとに期分けし、それぞれの期間で強化するポイントを明確にしているのです。
4月から6月はスピード強化の期間として、5000mを中心にした練習メニューに取り組みます。関東インカレをはじめとする大会にも積極的に参加し、実戦を積むことで力をつけていきます。
その後7月から9月は走り込みの時期です。月間1000km以上の距離を走り込む学生もいる。
10月から12月は徐々に練習で走る距離を延ばしていき、主に10000mやハーフマラソンで結果を出すようなトレーニングを入れていく。選手が走る距離が10km、20kmと延びていく。
一般的には出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝をまとめて学生三大駅伝と呼びますが、青山学院大学ではより箱根駅伝にフォーカスを当てて練習していきます。
そして駅伝シーズンが終わった後、1月から3月はハーフマラソンのレースなどにでながら、またしっかりと距離を踏んでいきます。これが次のシーズンに向けた土台作りにもなるのです」
このように、数ヶ月から1年ほどの時間をかけて、一つのレースに対してピークを作るために時期を分けて練習する、というのが期分けの基本的な考え方です。ピーキングというのは、このように時期を分けてトレーニングを行いながら、最終的に目標とするレースに対して心身ともに最高の状態に仕上げていくという作業なのです。
ちなみに、期分けにおける時期の分け方は、これは何を目標にするかによって全然変わってきます。青学大の場合はおそらく、一年かけて箱根駅伝に合わせて考えているので、下記のような分け方になっているのだと思います。
4月〜6月:スピード養成期(5000mに向けた取り組み)
7月〜9月:基礎構築期
10月〜12月:特別期および特異期(ハーフマラソン・箱根駅伝に向けて)
1月〜3月:ロードレースおよび基礎構築期(ハーフマラソン、マラソンを走る選手はレース、それ以外は基礎構築)
なお、これが例えば3月の東京マラソンに向けて1年かけてピーキングをする市民ランナーの場合は、下記のような期分けスケジュールになることが一例として考えられます。もし青学大のようなスケジュールに寄せていくとしたら・・・
4月〜7月:スピード養成期(5000mに向けた取り組み)
8月〜11月:基礎構築期
12月〜1月:マラソン特別期
1月〜2月:マラソン特異期
2月〜3月:調整期
また、11月くらいにもピークを合わせるレースを作りたいという場合は、以下のようなスケジュールになる可能性もあるでしょう。
4月〜5月:スピード養成期(5000mに向けた取り組み)
6月〜8月:基礎構築期
9月〜10月:マラソン特別期
10月〜11月:マラソン特異期および調整期(レース含む)
11月:レースおよび休養期
12月〜1月:マラソン特別期
2月:マラソン特異期および調整期
これらはあくまで大雑把な期分けの例ですが、このような形で時期によってトレーニングの重点をおくポイントを変えていき、本命のレースに向けて体を仕上げて最高の状態を作っていくというのがピーキングという考え方なのです。
ピーキングをすることのもう一つの大きなメリット
ここまで、ピーキングをすることで自分の実力を最大限発揮できるというメリットと、その基本的な考え方について紹介してきたのですが、実はピーキングをすることにはもう一つの大きなメリットがあるのです。
それが、原監督のこの言葉の中に隠されています。
「選手は100の練習を100%の能力でやれば良いというわけではありません。100の練習を80%ほどの能力でできて、初めて試合で安定して100%の力が発揮できるようになるのです」
どうでしょう、なんとなくお分かりいただけますでしょうか。要するにこれは、トレーニングに対して常にある程度の余裕を持ってこなせることで、かけたトレーニング刺激に対して体が100%適応しやすくなり、その結果としてレースでも安定して結果が出せるようになる、ということだと私は解釈しております。
トレーニング刺激というのは、かけたらかけた分強くなるものではありません。むしろ、刺激が強いとどうしてもかけた刺激に対して体が適応しきれないこともあり、そうなるとトレーニングをしてもあまり効果が得られない、なんてことにも繋がっていきます。
しかしながら、トレーニングに対して余裕を持てていれば、トレーニングに対する適応度合いも上がっていきます。適応度合いが上がるということは、全く同じ努力量でもトレーニング効果をより得られるということであり、その分より強くなれるということです。
期分けをきちんとしてピーキングをするということは、つまり「自分にとってどれくらいの負荷が適正なのか?」を正しく知ることにもつながりますし、また「今日の練習はどれくらいの力加減でやるべきものなのか?」ということが適切にわかるということにつながります。
逆に言えば、期分けもピーキングもしない、知らない、やろうとしないということは、全てのトレーニング負荷が「適当」に決められることになります。そうなると結果として、レースに出まくって強くなろうとしたり、練習会に参加してとりあえず集団走で高強度な練習をやって強くなろうとしたり、ということになっていきます。
しかし、繰り返しになりますが、トレーニングの刺激とは余裕がある方が適応しやすいのです。つまり、そういった高強度頼みな練習のやり方だとどうしても不適応リスクが高まり、せっかく頑張っていてもずっとタイムが伸びないということになってしまう可能性が上がるのです。
努力しているのに結果が伸びない、むしろ自分よりも練習強度が低そうなあの人になんで負けるんだ?それほど悔しい思いをすることはありません。そんな思いをしてしまう人が、少なくとも私のブログ読者様や受講生様からは出てほしくありません。
しかしながら、ピーキングをちゃんと理解していないと、そうなってしまう可能性はやはりどうしてもあります。だからこそ、ピーキングをしっかり行って、そうした失敗は避けて、かつ自分の持っている最高の力をちゃんとレースの日に発揮し、青学大のように安定した結果を出せるようになっていただきたいと思っています。
そのために今回、新たに作成した講義動画があります。タイトルはズバリ「ピーキング」。その名の通り、ピーキングに関して根掘り葉掘り、1から10まで解説する内容の講義動画です。
ここからはこの「ピーキング」に関する決定版の講義動画について紹介させていただきます。もしあなたが今、来シーズンに向けた計画を考えていて、本気で来シーズンの飛躍を狙っていきたいと考えておられるなら、知っておいて絶対に損はない内容です。ぜひこの先もご覧ください。
実は長距離走・マラソンは「練習でできないことが試合でできる」稀有なスポーツです。
は?練習でできないことが試合でできるわけないだろ。寝言は寝て言え!と思われるかもしれません。私もそう思います。でも、事実として練習だとしんどく感じるようなペースが、レースになったら楽に感じるとか、そういったことが本当にあるのが長距離走やマラソンなのです。
ただし、これはきちんと「やるべきこと」をやった人は、という前提がつきます。そのやるべきことというのが「ピーキング」です。
これは、日々真剣に走っておられる皆様ならお分かりいただけるかと思いますが、長距離走、特にマラソンに関しては基本は連戦が難しい競技です。プロ野球みたいに3日連続で試合なんてことは、絶対に無理です。仮にそんなことしたら、もう3日目のマラソンレースなんてスタート後1分くらいで脚が重くてたまらないでしょう。
つまり、連戦が難しい分、一発でより高いパフォーマンスを出すというのが長距離走やマラソンに求められる力なのです。このピーキングという取り組みは、まさに狙ったレースに合わせて調子を最高潮に仕上げていくためのもの。これをするかどうかで、レース当日のパフォーマンスが本当に天と地ほど変わるといっても過言ではありません。
トレーニングとは、自分の限界に挑戦するための作業です。自分のDNAに含まれる長距離走・マラソンの能力に関する情報を引き出すために、トレーニングという刺激をかけるのです。
特にマラソンの場合は予めレースの日程や場所、コースはほぼ決まっているわけです。その日、その場所で、42.195kmという距離を最も速く走るためのトレーニングを逆算して組んでいくことで、効率的に自分の持てる最大の能力を発揮、いや、場合によっては能力以上の力を発揮することにつながります。
逆に言えば、ピーキングを知らない、やらない、知ろうとしないというのは、自分の限界への挑戦を諦めることと同義です。1シーズンだけの話ならまだしも、それを3年、5年、10年と続けていけば、ピーキングをやる人とやらない人の差が冗談にならないくらいに開いていくのです。
その差はどこから来るのか?答えは単純で、毎年効率的に自分の限界に近づくトレーニング刺激をかけられているかどうか、です。
そこで「差をつける方」のランナーになるためには、ピーキングが不可欠です。
しかしながら、日々多くのランナーの方々とやりとりさせていただく中で、ピーキングを正しく理解して実践できている方がまだまだ多くないことに気が付きました。
せっかく努力をされているのに、ピーキングがうまくできていないことでレースで結果が出ない。結果が出ているとしても、本来なら今の努力量でももっと上を目指せるのに、そこまで到達できていない。それではもったいないですし、今一度ピーキングのことをしっかりと理解していただくことで多くの方にお役に立てると思い、作成したのがこのピーキングに関する講義動画です。
この講義を見れば、ピーキングという概念と、それとセットで理解すべき「期分け」という概念も全て理解でき、かつピーキングを考える上で重要な二大要素である「ピーキングファネル」と「ピーキングピラミッド」について、その関係性とトレーニングにおける使い方もしっかりと理解できます。
また、トレーニングの移行の仕方についても、どれくらいの時間をかけたら良いのか?どういう風に段階を踏んでトレーニングを基礎から実戦へ移行させていけば良いのか?といった具体的なことも理解し、実践できるようになります。
そして、この講義を受講していると、次のレースに向けた新たな取り組みのアイデアが色々と頭に浮かんでくることは間違い無いでしょう。講義を受けているその最中から、次のレースに向けて「あ、あれはやれていなかったな」とか、「次はこの取り組みを入れてみよう」みたいなこともきっと出てくるでしょう。
そんな今回の講義動画は、合計約2時間の内容となっております。あなたがこの講義をご受講いただくことで得られるメリットは主に
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・自分の立ち位置が明確にわかるようになり、トレーニングで迷わなくなる
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ウェルビーイング株式会社副社長
らんラボ!代表
深澤哲也
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質問:池上秀志はどんな人間ですか?回答:1993年12月27日京都府亀岡市生まれ、小学校より駅伝に親しみ、中学校から陸上競技部に入り、それからずっと長距離走をやっています。2017年の大阪マラソンでは日本人トップ、2020年に長距離走、マラソンの真理を届ける会社ウェルビーイング株式会社を興し、これまでのべ5000人以上の方にご利用頂いております。































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