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大阪マラソン日本人トップが教えるトレーニングのワンポイントアドバイス

更新日:2022年2月28日

 さて、今回のテーマは「大阪マラソン日本人トップが教えるトレーニングのワンポイントアドバイス」です。トレーニングのワンポイントアドバイスです。やっていない人が多いけど、ぜひやってほしいトレーニングが一つあるんです。


 それは「流し」と呼ばれる練習です。流しは他にも呼び方がいろいろあって、快調走、ウィンドスプリント、フロート、ストライドなどと呼ばれます。陸上競技の用語の中でも同じものを指すのに最も呼び方にバリエーションがある練習です。この記事の中では流しと書かせて頂きますが、普段他の呼び方で呼んでいる方は「ああ、あれのことか」と思ってください。ちなみに「すでに流しはやってるよ、当たり前だろ」と思う方も一応最後まで読んでください。意外と見落としている点が多いのが流しです。


 流しはどういう練習かというと、100mから2000mくらいの距離を気持ちよくペースを上げて走るのが流しです。色々な呼び方がある中で、流しと呼ばれるのはなぜかというと流して走るからです。短距離の選手が予選で、予選通過がほぼ確実な時にゴール前で力を抜くことを「流す」と言います。流しは全力で走るのではなく、流して走るから流しです。ウィンドスプリントにもそういうニュアンスがあると思います。スプリントではないけれど、風のように気持ちよく走る一種のスプリントだからウィンドスプリントなのでしょう。フロートは水上や空中を漂うという意味の言葉です。流されるようにスーと走るからフロートです。ストライドは歩幅を広げて走るという意味を込めてストライドです。そして、快調走は文字どおり、快調に走るから快調走です。


何れにしても全力で走るのが流しではありません。力を抜いてリラックスして走るんだけど、ある程度速いペースで走るのが流しです。というわけで、流しはスピードをつけるための練習ではありません。実はここがよく勘違いされることなんです。短い距離を速いペースで走るからスピードをつけるための練習だと思われがちなのですが、これは本質的ではありません。本当にスピードをつけたいのであれば、100mは長すぎます。本当にスピードをつけたいのであれば、60mくらいの距離をスプリントした方が良いです。


 では、流しは何のためにやるのでしょうか?大きく分けると二つあります。一つ目は技術練習です。長距離を速く走るための唯一の方法はリラックスして速く走ることです。単に速く走るだけでも、単にリラックスして走るだけでもダメです。リラックスして速くです。どのくらい速く走れば良いかというと目標とするレースペースです。目標とするレースペースでリラックスして走れるということがものすごく大切で、走技術というのはレース当日に変わってしまう、ほとんど唯一の要素です。そこには心理状態も関係してきます。


 一言でリラックスして速く走るといっても1秒で勝ち負けが決まったり、自己ベストが出るか出ないかが決まる競技ですから、やっぱり走り方が微妙に違えば結果の違いに大きく反映されるわけです。いかに良い時の走りの再現性を高くするかはとても大切です。


 ところで、長距離走というのは実はレースの動きをすることはほとんどありません。これが野球選手であれば、1日に何回もバットを振って、ボールを投げます。厳密に言えば、一回一回の動きは違いますが、ほとんど同じ動きをしています。反復練習という観点から言えば、同じ動きを何回も繰り返していると言えるでしょう。短距離や幅跳び、投擲の選手も同じです。動きづくりなどもたくさんしますが、基本は自分が競技でやる動きの反復だと思います。


 ところが、長距離選手はレースペース、もしくはレースペースで走るのは10%から5%程度です。それ以外の練習は無駄な練習かというとそうではなくて、それはそれでとても大切な練習です。むしろ、この土台の部分がしっかりとしている人ほど、レースペース以上の練習が活きてきます。これはまた別のテーマになるので、詳細は割愛します。


 ですが、技術面で言えば、レースペースの動きを体に覚えさせる機会が非常に少ないのです。そして、レースペースでやるような練習が技術練習になっているかというと少々微妙です。もちろん、技術練習にもなっているのですが、新しい技術を身につけたり、より高いレベルでのリラックスを体得するにはちょっと難しいんです。あなたもインターバルをやっている時のご自身の感覚を思い出してください。なかなか体の動きに注意を払うのは難しくないでしょうか?体の動きに注意を払っているとは思うのですが、新しい技術を試したり、リラックスして走ろうと思うのはなかなか難しく、何とかその練習をこなすだけでいっぱいいっぱいになると思います。


 流しの目的は、楽な練習の中で速い動きを入れることで、リラックスして速く走る動きを体に覚えさせる、少なくとも忘れないようにするのが目的です。週に二回ハードな練習をするとして後の5日は、それよりも遅いペースでの練習になります。これでは技術の習得という観点からは少し、不充分なのかもしれません。そこで、100mを何本かで良いので持久走の後に付け加えるとそれだけで、感覚的には掴めるものがあるんです。少なくとも体が忘れないようにする、という目的は果たせます。寧ろ、練習の目的を考えると同じ感覚で走っているのに、ペースが遅い時と速い時がありますから、それで自分の走り方がはまっているのか、はまっていないのか掴めると思います。


 もう少し具体的に説明すると、ペースが遅いランニングとレースでの最も大きな違いはストライド長です。ストライド頻度(ピッチ)に関しては、私の場合は3:45/kを切ってくると、レースペースとほぼ同じです。これより遅いペースのランニングでもできるだけストライド頻度を上げるようにしています。こうすることで、脚が疲れず走り込んでも疲れにくくなります。また、レースでも疲れにくい走りができるようになっていきます。


 ところが、ストライド長というのはレースペースと同じにならないとレースペースと同じ動きにならないんです。3:20/kというのはハードな練習以外の日の練習としては結構ハードなペースです。ところが、このペースでもレースペースと比べると一歩ごとに20cmくらいの違いがあります。20cmというのはかなり大きな差です。とはいえ、20cmくらいであれば、外見上の走り方はそう大きくは変わりません。ただ、本当にゆっくりとだけはしっていると、ストライドを伸ばすことが出来なくなり、腰もどんどん落ちた走りになります。良くも悪くもある動きを反復すると体はその動きを覚えてしまいます。持久走で綺麗に走れないと、強くはなれないというのは事実です。でも、いくら頑張っても限界はあるので、流しでストライドを軽く伸ばして、なおかつ腰を前にのせていく走りを確認するのも大切なことです。


 私がケニアのブラザー・コルムのトレーニンググループを訪れた時(ブラザー・コルムを知らないという方は「ケニアをケニアにした男」