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積極的休養が疲労回復を促進する理由と実践の仕方

積極的休養はアクティブリカバリーと呼ばれることも多いです。積極的休養の対義語は消極的休養であり、パッシブリカバリーです。一般的な言葉では完全休養と呼ばれることの方が多いかもしれません。要するに、何もしないのが消極的休養=完全休養であり、軽く体を動かして疲労の回復を促進させるのが積極的休養です。


 積極的休養の原理は非常に単純です。軽く体を動かせば血液循環が良くなります。どのくらい良くなるのかということですが、例えば最大心拍数の60%の強度ですでに安静時の心拍数の約二倍になります。そして、一回拍出量は最大心拍数の約60%で最大に到達します。最大一回拍出量はエリートランナーで約2倍になります。仮に1.5倍だとしても2×1.5倍で3倍になります。しかも軽くそれを40分は続けることが出来ます。


 血液循環を安静時の3倍でそれを30分から60分程度継続できるリカバリーの方法ってそうそうないです。では最大心拍数の60%というのはどのくらいの運動強度化と言うことですが、非常に楽です。めちゃくちゃ楽です。普通に会話を楽しめます。私でも1キロ5分半ペースで走れば、最大心拍数の60%くらいまで到達します。それをやや下回るかもしれませんが、やや下回っても構いません。重要なのは安静時よりもはるかに多くの血液循環が行われるということです。


 昔ヤクルトスワローズを初優勝に導き、西鉄から太平洋クラブやクラウンライターに身売りを繰り返し、西武が最終的に買い取った西武ライオンズの草創期にリーグ優勝三回、日本一2回に導いた広岡達郎という監督がいました。広岡監督はとにかくシーズン中でも練習させる人で、疲労回復の特効薬は軽めの練習と著書に書かれておられます。


 移動日でもそのまま球場に直行して練習したりということをやっていたそうです。選手からは苦情も出たようですが、軽めとは言え、練習量も増やせますし、疲労回復にもなるので、そのシーズンは選手の故障が減ったそうです。


 アクティブリカバリーの絶対条件は、主観的に楽であることです。どの程度の運動であれば、積極的休養になるのかはその人のレベルによって異なります。例えば、ハーフマラソンを1時間45分で走る人に8キロを1キロ5分ペースで走る用に指示したらそれは積極的休養になりません。立派なトレーニングです。一方で、私の走力であれば、完全に積極的休養です。トレーニングにならないでしょう。


 また、アクティブリカバリーは必ずしも走るとは限りません。Syokoトレーニングやサイクリング、水泳、インラインスケートなどを好んで取り入れる選手もいます。理由は単純で、軽めの練習とは言え、走ると接地の衝撃があるからです。特に故障を抱えている選手の中には、午前中にメインの練習をやって、午後はサイクリングや体幹補強を組み合わせたアクティブリカバリーにあてる選手もいます。また、積極的休養は心のリフレッシュも兼ねているので、自分の好きなスポーツで軽く体を動かすと良いと思います。


 そういう意味では私にとってのベストなアクティブリカバリーはジョギングかSyokoトレーニングです。それ以外にあり得ません。海外で合宿をした時には補強として水泳も入っていましたが、私は泳ぐのが苦手なので水泳はアクティブリカバリーになりません。れっきとして補強練習でした。本書をお読みの皆様は自分の趣味に合わせて好きなものをやると良いと思いますが、もしも指導者の方で本書をお読みの方がいらっしゃれば、積極的休養の際には個々の能力に応じた積極的休養を設定する必要があります。


 この時に、それがジョギングであれば簡単にその強度を設定することが出来ます。何故なら、その選手の走力を把握しているからです。ところが、それ以外のスポーツをやるとなると意外と他の選手にとっては楽なことでもその選手にとってはきついこともあるので、慎重に強度を設定する必要はあります。


 積極的休養の利点は血液循環が良くなることだということをお伝えさせて頂いたのですが、それに伴う大きなメリットの一つは、老廃物を除去することが出来ることです。中でも乳酸を除去できるのは大きなメリットの一つです。血液循環量だけではなく、酸素の循環量も大幅に増えるので、乳酸除去にはもってこいです。そんな訳で、午前中にインターバルをしたり、レースに出たりした場合は午後に軽くジョギングをすると疲労の回復が促進されます。あるいは前日にインターバルやレースに出て、次の日にリカバリーランをするでも構いません。おそらく完全休養よりも疲労の回復が速まるでしょう。


 一方で、積極的休養があまり適さないケースもあります。それは午前中や早朝に距離走をしたケースです。距離走では乳酸はあまり発生しませんし、そもそも長時間走ってダメージを負っています。こういったケースでは、午後に走ることでグリコーゲンの再合成も遅くなりますし、ゆっくりとは言え更に接地の衝撃を与えることになるので、回復が遅れます。こういったケースにおいては積極的休養は適さないでしょう。


 鉢伏合宿の二日目には距離走を入れていますが、その日の午後は走練習ではなく、Syokoトレーニングにしています。その理由は接地の衝撃を与えずに血液循環を促して疲労の回復を促進することにあります。まあ、あれは積極的休養じゃないというお声がほぼ100%だと思いますが、まあそれは合宿ということでご愛嬌です。


 また、考え方としては積極的休養が半分、練習が半分みたいなトレーニングがあることも頭に入れて頂きたいと思います。例えば、私にとってはウォーミングアップがてら走り走り始めて最後は1キロ3分半くらいまで上げていくような低強度から中強度の18キロ走なんかがこれに該当します。これはトレーニングですかと言われれば明らかにトレーニングですし、実際に積み重ねれば力もついていくでしょう。


 でも、強度はそれほど高くないので、積極的休養的な一面もあり、実際に乳酸の除去には非常に役立ちます。野口みずきさんも体を動かした方が筋肉がほぐれるとおっしゃっていましたが、それに近い感覚です。そういう理由もあって、長距離選手はあまり完全休養というのはしないんです。


 その他本当に軽い運動であれば、散歩とかでも良いと思います。ちなみに私は散歩好きです。それからジョギングをするにあたっては別に4キロとかでも構いません。お散歩ジョギングみたいな感じですよね。単純に効率の良さで言えば、1時間の散歩で循環する血液の量は20分ジョギングで充分に流せるはずなので、ジョギングの方が効率は良いです。ただ、精神的にはもう走りたくないという時もあるでしょうし、何よりお散歩だとショッピングがてら歩いても良いと思います。


 また、精神的な話をすると、ゆっくりジョギングすることで走ることがまた楽しくなります。やっぱり、速く走ってばかりだと心も疲れてきますし、走ることが楽しめなくなってきます。物凄―くゆっくり走ることで走ることがまた楽しくなりますので騙されたと思って一度やってみて下さい。犬の散歩をしているおばさんについていくくらいの気持ちで走ってみて下さい。人間って面白いもので遅く走り過ぎるとまた速く走る練習が楽し