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整形外科が絶対に教えてくれない腱の治療とLLLTの話

更新日:4月10日

ランナーにとって腱の故障と言えば、アキレス腱の痛みです。アキレス腱の痛みはランニング障害の中でもトップクラスに多い故障です。私が統計を取ったことはありませんが、肌感覚で言えば、トップがシンスプリント、次にアキレス腱、次が足底であとは色々その辺の筋肉の炎症というイメージです。


 そんなアキレス腱ですが、実は走る上では非常に重要な器官です。分かりやすく言うとですが、アキレス腱はゴムやバネのような働きをしています。歩きと走りの最も大きな違いはジャンプをするかしないかです。従って、競歩では必ず片足のどちらかが地面についていないと失格になります。歩くという動作においては、片足が地面についている状態でもう片方の足を前に振り出し、地面についてから前へと体重移動します。一方で、走りの場合は軽くジャンプして両足が地面から離れ空中にいる状態があり、体重を前に移動させながら、同時に足を地面につきます。


 ちょっと、余談になってしまいますが、このことからかかとから地面につくとブレーキがかかって効率が悪くなるというのは嘘だということが分かります。もちろん、歩くときと同じように重心が後ろに残ったまま足だけ前に出して、踵からつけばブレーキがかかります。ただ、これはつま先からつこうが中足部でつこうが同じことです。


 足はどこからつこうが、手前に引き寄せながら接地しないといけません。足をいったん目に振り出して、それを手前に引き寄せる局面と重心(へそ、下丹田の辺り)が前に移動する局面において、ちょうど足が骨盤の真下に来る辺りで接地するのが望ましいのです。そして、空中で足を手間に引き寄せながら、上半身を前方へと移動させることからも分かるように、ランニングとは一歩一歩の小さなジャンプの繰り返しです。


 で、その時にどうも神がわれらに与えたもうたのが、アキレス腱だそうです。人間が走る時、どれだけ効率よく走ったとしても、ジャンプをするので多少の上下動は生じます。この時、接地の局面においては位置エネルギーが運動エネルギーへと変換されて、地面をたたく力となり、そこから作用反作用の法則が働いて再び前方と上方への運動エネルギーへと再変換されるはずです。その時にエネルギーの変換をより経済的に行うために人間の足首辺りにゴムのようなバネのようなものを付けた、これがアキレス腱です。


 神がわれらにあたえたもうたのか、進化の過程で遺伝子に変異が起きたのか、それとも偶然アキレス腱が生えてきたから人間は走るようになったのか、それは分かりませんが、いずれにしても、アキレス腱のお陰で我々ヒトはチンパンジーや豚やカバなどのアキレス腱を持たない動物よりもはるかに持久走に優れることになりました。そして、同時にそのためにアキレス腱を酷使することにもなり、ランニング障害の中ではアキレス腱の故障が多いという訳です。


アキレス腱の組成

 アキレス腱の周囲には腓腹筋、ヒラメ筋の足底筋があり、踵後部にあるアキレス腱の起端部から約12㎝上部で腓腹筋、ヒラメ筋と結合し、一つの太い腱を形成しています。足底筋は腓腹筋とヒラメ筋の間を走る小さな筋肉で厳密にはアキレス腱の一部ではありません。腓腹筋はふくらはぎの表層部分の筋肉でつま先立ちすると、浮き上がるのが腓腹筋で、膝関節の上部に端を発しています。一方、ヒラメ筋は深層部の筋肉で膝関節よりも下に付いており、それ故それぞれの筋肉のストレッチや補強運動は異なります。


 アキレス腱はタイプ1コラーゲンとタイプ3コラーゲンの二種類のコラーゲンから構成されています。タイプ1コラーゲンの方が弾力性と耐久性に優れており、通常、95%はタイプ1コラーゲンによって構成されています。 アキレス腱は90度回転して付着しており、この構造こそが走動作においてアキレス腱がばねのように働く要因です。この構造は接地時に働く重力の反動をエネルギーに変換してくれます。


 腱の故障からの回復過程は、ごく普通の筋肉の故障からの回復過程と基本的には同じで、先ずは損傷個所に炎症反応が起きて、インターロイキン1ベータ、TNFα、シクロキシナーゼ2(COX2)、プログラスタランジンE2などの炎症誘発物質が出て、それに伴い急性期の炎症反応が生じ、治癒過程が進んでいきます。ちなみにですが、COX2とプログラスタランジンは見たことがある人も多いのではないでしょうか。これは市販の痛み止めや頭痛薬、解熱剤などのパッケージの裏側を見るとよく「発痛物質であるCOX2の生成を抑え痛みの原因を取り除きます」や「発痛物質であるプログラスタランジンの生成を抑え痛みの原因を取り除きます」などと書いてあることが多いです。


 さすがに私も薬マニアではないので、どの会社のどの製品にそれが書いてあったのかということまでは覚えていませんが、メカニズムは全て同じで、バファリン、イブクイック、ロキソニンS、ジクロフェナクが入っている湿布などは全てこれらの炎症誘発物質を抑えることで、痛みを下げたり、熱を下げたりするのです。


 話を元に戻すと、全ての急性期の炎症反応同様、治癒過程を促進するというメリットもありますが、炎症反応に伴うデメリットもあって、腱の場合は早い段階でこの炎症反応を抑えておかないとタイプ1コラーゲンの生成を阻害し、タイプ3コラーゲンの率が高い腱が出来上がってしまいます。もう一度おさらいをしておくと、タイプ1コラーゲンが弾力性に富み、強い腱で、タイプ3コラーゲンは弾力性に乏しく、弱い腱です。ですから、タイプ3コラーゲンの率が高くなってしまうと、自分で治療をしないとなかなか治らなくなってしまいます。